京都大学新聞(2003.5.1)




大学発最前線ベンチャー VOL.2

ベンチャーは女性向き〜大学事務代行 ダブルワークス〜

 堺市大仙町・仁徳天皇陵を近くに控えた府立大阪女子大学の静かなキャンパスの中に、有限会社「ダブル・ワークス」はある。約12平方メートルのこじんまりとした事務所内には、数台のパソコンと書類と、代表取締役の難波美都里さんら女性スタッフの熱気が溢れる。
 「ダブル・ワークス」は、大学関連のパンフレット、ポスター、Webサイト作成や事務代行を主な業とする。代表取締役の難波さんや取締役の友村さおりさんらスタッフ全員、もともと大阪女子大学大学院社会人間学専攻の院生だった。とはいえ、難波さんは、いったん金融機関に勤めた後で同大学の大学院に編入した経歴の持ち主。同じ院生室に出入りしていた年齢の違う女性たち四人が集まって設立したのが、「ダブル・ワークス」だった。大学院を卒業した後、学内で事務のアルバイトをしていた難波さんが大学のパンフレット作成をもちかけられたのが企業のきっかけ。2001年の初めから活動を開始し、同年11月には、大学の教職員有志が設立した「大阪女子大学SOHOサポートファンド」の出資を受けて、資本金300万円の有限会社組織となった。
 社名の「W」には、もちろん、「WOMAN(女性)」の意味も込められている。難波さんはこう語る。「起業にあったっては、ひとつは、府立大阪女子大学というカラーを外に出したいというのもあります。当大学は社会人学生の比率が高い。けれど、女性であり、高年齢だった場合、なかなか再就職は難しかったりします。そうした中で、女子大の卒業生をマンパワーとしてアピールすることが出来たら、と思ったのです。」
 そもそも大学という世界は、各種資料の作成や学会の事務など、実にたくさんの情報処理業務を必要としている。学内外の教員から、研究や学会などに際して「こんなことはできないか。」という問合せや依頼が飛び込んできて、その都度業務を広げてきたという。「まずは需要が先でした。」(難波さん)。
 現在の業務の柱は、学会誌、科研費報告書などの出版物の版組みや製本、学会事務の一括代行、南大阪地域大学コンソーシアムの事務代行など多岐に渡る。
 今後、国公立大学の独立行政法人化や少子化による私学の経営リストラといった事態に伴い、大学事務のアウトソーシングが進むことが予想される。「ダブル・ワークス」はその受け皿になることも睨む。
 同時に、事務のコンセプトとして、「女性の社会参加」があるようだ。難波さんは語る。「「女性企業化支援」というテーマで調査を行ったことがあるのですが、調べてみて、ベンチャーというのは、実は女性向きだと思いました。女性は結婚、出産などライフスタイルの変化がある。ベンチャーなら、女性が自分のスタイルにあわせて働ける面もあるのです。」
 今後の方向性として、女子大学卒業生に仕事を紹介して活動の場を提供しようという「お仕事ネットワーク」の試みも始まっている。たとえば、大学教員から研究室の秘書を紹介してほしいというオファーを、職を探している卒業生と結びつける。また、育児中の女性でも、テープ起こしなど在宅でできる仕事を紹介するのだ。
 そんな「ダブル・ワークス」が法人化してから約一年半が経った。この間の経営はどのようなものだろうか。「飛び込みの営業はしたことがないです(笑)。いつも外から仕事がやってくるという感じで。」(友村さん)。大学関係のニーズが先にあって、4人で論議しながら商品化してきたとのことだ。 
 大学の卒業生が手作りで作った会社 1年目は経費をあまり考えず、赤字だったが、2年目になってようやく収支や金額見積りの勘が出来たという。社員の勤務時間は自由な代わりに給料は出来高制にしていたが、今年に入って定給制へ移行した。
「気付いたら取締役(笑)。会社の運営も試行錯誤でしたが、2年目になって少しは慣れてきた、かな。」友村さんが笑った。
(じろ)