日本養液栽培研究会 | Hydroponic Society of Japan

ハイドロポニックス 第22巻 第2号 要約

巻頭言:飛耳長目(ヒジチョウモク)

磯崎真英

過去10年を振り返りながら,これからの養液栽培研究会について5項目に分けて記述している.(項目)1.役員のすすめ,2.この10年を振り返って,3.養液栽培研究会の知名度,4.昨今の肥料高騰,5.養液栽培でも土耕栽培でも関係ない

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内外のニュース:第63回日本養液栽培研究会・栃木大会について

塚越 覚

平成20年11月12日~13日に,第63回日本養液栽培研究会・栃木大会が,111名の参加で,栃木県那須塩原市において開催された.12日はホテルエピナール那須で,研究会では5課題の講演が行われた.恒例の分科会は3課題について意見交換が行われた.5社の企業展示も併設された.13日は見学会が行われ,トマト,カーネーション,イチゴの栽培現場を視察した.

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内外のニュース:第9回養液栽培技術研修会「養液栽培夏の学校2008」

鈴木未央

平成20年8月25日~29日の5日間,第9回養液栽培夏の学校2008が京都府立大学において開催された.企業,農家,研究・普及員など31名が,全国各地より参加したが,初級編ということで基礎から応用までの講義と,養液栽培装置組み立てなどの2つの実習が行われ,有意義な5日間となった.

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内外のニュース:日本生物環境工学会2008年大会報告

川越 温

9月7日から11日まで,愛媛大学城北キャンパスにおいて日本生物環境工学会2008年大会が開催された.この学会は,2007年に日本生物環境調節学会と日本植物工場学会とが合併し誕生したものである.植物生育診断技術や,環境制御技術などの環境工学の面からアプローチされた研究発表が多く見られた.その中で,施設園芸および養液栽培関連の研究発表も多く行われていたものをここに報告する.

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内外のニュース:アグロ・イノベーション2008について

山本裕菜

2008年7月16日(水)~18日(金)に,アグロ・イノベーション2008が幕張メッセで開催された.441ブースの出展があり,入場者は計40,828名であった.種子・育苗や栽培管理装置,環境制御装置,ハウス資材,流通と多岐にわたる展示があった.生産者をはじめ,研究者,企業・小売関係者など,様々な分野の方々で賑わった.本会も例年通り出展し,夏の学校など活動内容の紹介や入会受付,過去の大会資料と「ハイドロポニックス」DVD版,養液栽培の絵本などを販売した.

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内外のニュース:園芸学会平成20年度秋季大会

吉田洋人

園芸学会平成20年度秋季大会が,2008年9月27日から9月29日にかけて三重大学で開催された.本大会では,養液栽培に関連する研究発表が数多く行われた.野菜分野の発表は,トマトと葉菜類に関するものが多く,特にトマトの低段密植栽培に関するものが多かった.花き分野の発表は,口頭発表およびポスター発表ともに少なかった.

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内外のニュース:農研機構シンポジウム「野菜の養液栽培における周年安定多収生産のための養水分管理技術」

吉田 剛

2008年10月2日~3日,三重県津市において農研機構シンポジウム「野菜の養液栽培における周年安定多収生産のための養水分管理技術」が開催された.静岡大学の切岩祥和準教授による野菜の養液栽培における周年安定生産と生理障害についての講演,トマト,イチゴ,パプリカ,葉ネギにおける養水分管理に関する研究成果発表,現地の栽培事例,総合討論の内容を簡単に紹介する.

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内外のニュース:「オランダ施設園芸の最新事情 日本施設園芸協会主催のオランダ研修に参加して」

中野明正

最先端技術を有し,かつ世界有数の農産物輸出国であるオランダを訪れ最新情報を得る研修に参加した.(1)施設園芸の最先端技術開発のメッカ,ワーゲニンゲン大学での日蘭共同セミナーに参加し,オランダ施設園芸技術開発の状況について情報収集するとともに,日蘭の施設園芸技術開発について講演と意見交換を行った.また,同大学の構内温室を見学した.(2)世界最大規模の施設園芸展HORTI FAIR(10月14~17日開催)を見学し,展示場で1日かけて情報収集した.(3)温室関連企業および,(4)高生産を世界に誇る大型先進農家を4ヶ所見学した.

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事例紹介:オランダのトマト生産最新事情~その2~

福田直也

オランダを訪問したときに見聞きした最新情報を,前号に引き続き紹介する.生産と労務管理システムのIT化は,作業性向上や情報収集の一元化に効果を発揮していた.省エネルギー技術については,コスト削減のためのコジェネレーション導入や電力売買の状況について述べている.最後のまとめとして,EC圏での激しい産地競争に挑んでいるオランダ生産者のビジネス感覚や,生産性向上の意識について記述している.

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事例紹介:既存設備の有効利用と観光農園への取り組み!

南出卓哉

就農当時は,ミツバの養液栽培の知識も乏しく,設備にもかなりの無駄があり,経営が安定しない状態が続いたが,問題点を洗い出し,いくつかの改造で,非常に効率よく合理的に栽培ができる環境になり,安定した経営ができるようになった.その後,自分の独自色を出したいと思うようになり,いちごの養液栽培をスタートした.いちごでは,付加価値の高い商品作りや,バリアフリーの観光農園などを始め,好評を得ている.

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研究の紹介:マイクロウェーブを利用した植物のストレス検出

下町多佳志

筆者が研究を進めているマイクロウェーブを利用した植物のストレス応答の検出技術について,基礎的な研究内容やストレス応答の検出のメカニズムについて解説する.並行して開発を進めてきた農業の現場で使用可能な簡単操作な植物ストレスセンサーについても紹介する.

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研究の紹介:土壌中水分移動のシミュレーション 水の動きを目で見よう

稲生栄子

土壌中の水分移動をシミュレートすることができ,しかも簡単に使えるソフトウェアを作成したので紹介する.Gaylon.S.Campbell氏のBASICプログラムを,表計算ソフトExcel上で計算から結果の視覚的表示まで行えるようにしたものである.

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研究の紹介:新品種のマーケティング面からの評価とその活用

鈴木美穂子

消費者と近接した都市農業地域である神奈川県でのマーケッティング手法について,中晩柑「湘南ゴールド」で行った事例を紹介する.まず,作物の特長をSWOT分析し,消費者のニーズをグループインタビューや卸売市場などから収集した.販売戦略としては,消費者にわかりやすいストーリーを作成し,インターネットで公開している.これらのマーケッティング手法は,個人出荷が主体の生産地にとって有望な技術である.

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研究の紹介:高濃度溶存酸素条件に対する作物の応答を知り,上手に技術を活用しよう!

切岩祥和

無気泡酸素溶解装置を利用して高濃度の溶存酸素条件で葉菜類を栽培すると,作物の生育が促進される傾向を示す.しかし,その最適な濃度は10~18ppm程度で,最適条件は作物によって異なった.また,作物によって異なるものの培養液pHの変動や酸素消費量も影響され,高濃度溶存酸素条件が酸素や養分吸収に影響している可能性が示された.一方,セルリーのように根の伸長が抑えられる作物もあるため,作物の特性にあわせた本技術の利用法を確立する必要がある.

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連載:ブルーベリー「アクアポット栽培」を核にした広域連携型ビジネスモデルの展開I

嶋本久二

養液栽培技術を利用して独自開発した「アクアポット栽培」システムをブルーベリーに応用して初期生育が旺盛になる栽培方法を確立した.新規品目であるブルーベリーの供給シェアーを拡大することと早期にブランド化するために,自社農園及び周辺農家に本システムを普及した.さらに,異業種からの新規参入を容易にするために,これまで培ってきた栽培管理技術,農園運営,生産物の販売サポート等をパッケージ化したビジネスモデルを構築し,大規模経営の参入を進めている.

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新製品紹介:超小型温湿度データーロガー「ハイグロクロン」

西本勝利

手軽に温度と湿度を計測できるツールとして,様々な業種,各分野での利用が広がっている世界最小級の電子式温湿度計測器「ハイグロクロン」の商品紹介.ハイグロクロンは,直径がわずか2cm足らずの大きさであるが,設置した箇所の温度と湿度を一定間隔で記録して,温湿度推移を記録に残すことができる.しかも,電池を内蔵しているため,配線の必要がなく,設置しづらい場所にも有効である.

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特集:花き養液栽培の現状と今後の方向

加藤俊博

切り花の輸入が増加し,花きの市場価格は低迷しているが,逆に生産コストは増すばかりである.ここでは,高品質,高収量,低コスト,環境保全が望まれている花き養液栽培の課題と今後の方向を紹介する.はじめに,養液栽培の普及している花きの特長,養液栽培のメリットを述べている.ついで深夜電力によるヒートポンプなどの環境制御の現状,精密な養液管理による肥料コストの削減,MPS導入によるブランド化を紹介し,日本の高品質切り花がアジアの富裕層に販売できるような方策が重要としている.

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特集:粉砕スギ皮培地を利用したユリのボックス抑制栽培技術

高木和彦

ユリの球根を綿状に粉砕したスギ皮を詰めた球根運搬用ボックスに植え付け,養液土耕栽培システムを用い生育ステージに応じた灌水施肥を行う.9月に球根を植え付け12月に収穫する抑制栽培では,土耕栽培の切り花に比べ,草丈,重さ等のボリュームが優る品質の良好な切り花が得られた.

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特集:キクの挿し穂生産への養液栽培手法の導入

谷川孝弘

キク苗の効率的生産への手段として,養液栽培に注目し,安価な培地として粉砕スギ皮を用いた苗生産を試みた.その結果,土耕栽培による挿し穂生産と比較して,10カ月以上に及ぶ連続採穂が可能なこと,約3倍の挿し穂収量が得られること,定植後の生育が優れることなどを実証した.

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特集:チューリップ切り花の養液栽培

種村竜太

新潟県農業総合研究所園芸研究センターでは,チューリップ切り花の養液栽培技術を確立し,普及機関と連携して現地への普及を図っている.自家施工が可能な簡易な湛液システムとし,50穴セルトレーで球根を固定する.培養液は大塚A処方1/8濃度を使用する.品質の安定性,採花率の向上,労力の軽減などが評価され,生産者の高い関心を得ている.

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特集:底面給液ポットと間欠給肥法によるバラ養液栽培の排出チッ素削減技術

佐藤展之

バラの養液栽培において,使用肥料量と,排出肥料量を削減できる技術を開発した.底面給液ポットで栽培し,肥料成分を含む養液と微量要素のみを含む微量要素液を,間欠給肥法を用いて与える.この給液法により,使用肥料量の50~70%の削減が可能となる.バラの収量と品質は,慣行の給液法と差はなかった.

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連載:やさしい養液栽培: 培養液分析デ-タを活用しよう(その3)組成の乱れた培養液を単肥で補正する

塚越 覚

植物の吸収濃度をもとに処方された培養液は,理論的には養分の不均衡な吸収が起こらず,長期間安定するはずである.しかし実際には,気象条件や植物の生育ステ-ジなどによって,処方通りには吸収されない場合がほとんどである.したがって,培養液を使い続けるうちに,多かれ少なかれ,その組成が変化してくる.今回はその乱れを単肥で補正するための計算方法を,主要5要素について解説する.

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質疑応答:表題 Q: 私は土耕でトマトを栽培していますが,息子が跡を継いでくれることもあり,思い切って養液栽培を導入しようかと考えています.その際どのような点に注意すればよいのでしょうか?

松田眞一郎

トマト栽培を土耕から養液栽培へ切り替える際に考慮すべき事項を,これまで養液栽培の経験がなかった農家からの質問に答える形式で回答.経営面と技術面の2つの側面からそれぞれの注意点を解説した.経営面では販売戦略と施設導入資金について,技術面では土耕との肥培管理等の違いについて,それぞれ概略を述べた.

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書評:からだにおいしい野菜の便利帳

岩崎泰永

野菜の栽培技術について多数の研究成果を残されている板木利隆氏が,一般市民向けに執筆した「からだにおいしい野菜の便利帳」を紹介する.野菜,穀物,きのこ,山菜,果物など100種以上を,多数の写真とともに来歴や栽培方法,調理方法まで記述されている.読んで楽しい野菜栽培の入門書として利用価値は高いであろう.

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