日本養液栽培研究会 | Hydroponic Society of Japan

ハイドロポニックス 第25巻 第1号 要約

巻頭言:「つながり」を考える

松田 眞一郎

 現代社会が抱える「つながり」の希薄化という問題点がある中で、東北関東大震災をきっかけに、より注目されるようになった人間どうしの「つながり」の大切さを述べた。養液栽培研究会でも、全国に広がる会員どうしの「つながり」の強さを、今後も活かし続けていきたい。

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内外のニュース:第68回日本養液栽培研究会・静岡大会について

桂 武彦

 5月20日に行われた静岡大会には約120名が参加した。今回の大会では,研究会に先立ち,東日本大震災被害状況報告会を開催し,講師として宮城県農業・園芸総合研究所の相澤氏,福島県農業総合センターの常盤氏を招き,それぞれの被害状況や現状についての報告が行われ,参集した会員とともに今後の研究会の支援体制について紹介された.研究会では暑さに打ち克つトマト栽培と題して7名の講師が,昨年の夏の高温による裂果発生状況の報告やその生理機構に関する解説および高温対策に関して話題提供し,貴重な情報交換を行った。また翌日には現地見学会も開催し,現地圃場でも会員同士が活発に情報交換を行い,有意義な大会となった.

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内外のニュース:平成23年度園芸学会発表要旨ダイジェスト

伊藤 善一

 3月20,21日に,宇都宮大学農学部にて開催される予定であった園芸学会平成23年度春季大会は,3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の発生を受け中止となった.本稿では発表要旨の中から養液栽培に関する研究成果について4件の課題を取り上げ,その研究概要が紹介されている.

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内外のニュース:第2回寿光国際施設園芸先端学術フォーラム(中国)および関連博覧会

古在 豊樹

 中国山東省寿光市にて4月19日~22日かけて開催されたフォーラムの様子が紹介されている。講演題目の内訳は,中国式日光温室8題、温室環境制御・養液管理6題、養液栽培システム6題、LED植物工場・LED苗生産4題、コンピューター・通信・環境制御3題、節水栽培2題、暖房費節約1題、植物残さ利用1題で、著者の視点からそれぞれの講演の概要についての紹介と、フォーラムに参加して感じた著者の感想が紹介されている。

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内外のニュース:北海道養液栽培(植物工場)研究会の設立について

奥田 晋一

 2月25日に札幌市で開催された設立総会について紹介され、北海道農業の新たなチャレンジとしての本研究会の設立の意義について述べている。北海道知事も植物工場導入支援をすすめるなど今後の展望についても紹介されている。

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内外のニュース:第21回SHITAシンポジウム
 -原点に立ち返れ!技術立国“ニッポン”が創る植物工場-

和田 光生

 2011年1月21日に開催されたSHITAシンポジウムでは,植物工場に関する最新の話題について8課題の講演が行われた.その内,(財)社会開発研究センター高辻氏による基調講演から最近注目される全国の完全人工光型植物工場施設の事例と㈱テクノローグ河本氏による講演から人工光源の光環境と植物への作用に関する話題を中心に内容が紹介されている.

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内外のニュース:東日本大震災復興に向けた日本養液栽培研究会緊急会議

切岩 祥和

 4月19日、日本養液栽培研究会緊急会議が開催され、関連企業を含め34名が参加した。参加企業各社による対応、今後の研究会としての支援・取り組み方針などについて意見交換が行われ,その様子が簡単に報告されている。

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事例紹介:小江戸川越の特産品

金子 朋裕

 (有)金子園芸の経営の歩みや設備の変遷を紹介し,ミツバの生産技術の向上に関する取り組みの紹介と、これからのミツバの販売促進に関する取り組みとしての「ミツバ版オリジナルレシピ」について紹介している。

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事例紹介:見るバラから食べるバラへ神奈川県平塚市「横田園芸」の取り組み

原 靖英

 神奈川県平塚市でバラ栽培を行っている横田園芸では,食用バラの生産に取り組んでいる.品種は,色彩が鮮やかで香りが良い「イブ・ピアッチェ」等4種を用い,土耕ハイラックで栽培を行っている.病害虫防除は,安心して消費者がバラを楽しめるよう化学農薬を用いず,天敵の利用や物理的防除を行っている.販売は市場を通さず,すべて注文のみの直接販売を行っており,レストランや食品加工に用いられている.

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事例紹介:静岡県のガーベラ生産の状況

外岡 慎

 静岡県は全国のガーベラ産出額の34%を占める主産県である。県内主要3農協管内におけるガーベラの栽培面積は1,764aで、隔離(養液)栽培の導入率は46%である。隔離(養液)栽培の方法は産地や生産者により異なり、多くの栽培方式が混在する。ここでは、静岡県におけるガーベラ生産の状況について隔離(養液)栽培を中心に紹介する。

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研究の紹介:研究プロジェクト「加工プロ」施設果菜栽培の研究成果

鈴木 克己

 業務加工用野菜の振興をはかる農水省の研究プロジェクト「加工プロ」が5年間の研究期間を終えた。低コスト多収生産を目指して研究を行った施設園芸の課題の主な成果として、トマトのロックウール養液栽培での量管理技術、高度な制御を安価で実現するユビキタス補光システム、国産パプリカの効率的なCO2施用方法や少量多頻度給液技術、栽培終了時の青い果実を蛍光灯照射により着色促進する技術などが紹介されている。

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研究の紹介:オゾン水を利用したロックウール栽培トマトの培養液殺菌システム

黒田 克利

 トマトのロックウール栽培で養液を循環利用するため、オゾン水による養液殺菌システムを開発した。殺菌槽内に入れた養液を直接オゾン水生成装置に取り込み、槽内に戻す循環殺菌では、オゾンガス殺菌に比べ殺菌効率が著しく向上する。トマトのロックウール栽培に開発した殺菌装置を組み込み、給液した養液の30%を殺菌後に再利用する循環利用を行った場合、慣行の養液掛け流しと同等の収量および品質を確保することができた。本稿ではその詳細を紹介している。

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研究の紹介:トマト低段密植栽培の房採り収穫装置

大森 弘美

 トマトの果房から1果ずつ採る方式の収穫ロボットでは,果実の高度な認識技術や把持機構が必要で,実用化には至っていない.そこで,トマト低段密植栽培を対象とした房採り方式の収穫ロボットの開発を進めている.果房ごとの収穫を確実に行うための器具を栽培ベッド側面に設置し,そこに果抦を固定した.この器具の利用を前提とした比較的簡易な機構の収穫ロボットを試作し,基礎実験を行った結果,実用性は高いと判断できた.

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研究の紹介:毛管防根給水紐を用いた養液栽培システムの開発について

桝田 正治

 著者が開発した「防根給水紐」を用いた養液栽培システムの概要をわかりやすく説明し,そのシステムにおけるトマトの培養液管理に関する研究について紹介されている。本稿ではその開発過程で生じた課題や実用化にあたっての留意点など、普及を想定した著者の知見も紹介されている。

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連載~オランダトマトの多収化を探る~:(3)受光の状態と光合成

東出 忠桐

 光-光合成曲線でこれ以上増加がみられない光合成速度の上限を最大光合成速度という。一枚の葉では光が強くなると光合成速度は上限に達するが、葉面積が十分にあれば下部の葉まで強い光にさらされることはない。このため、通常の栽培状態では個体や群落として光合成速度が上限に達することはない。光合成速度や葉面積が等しくても、受光の状態、すなわち、下部の葉まで光が届いているかによって個体や群落としての光合成生産は異なる。

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新製品・サービス紹介:トマトトロ箱養液栽培システムの紹介
 ~水稲育苗ハウス等の遊休ハウスの新たな活用技術~

JA全農 営農・技術センター 農産物商品開発室

 水稲育苗ハウスの稼働率向上や遊休ハウスの積極的な活用をはかるため,設置が容易で,導入コストが安価なシステムとして開発されたシステムの紹介と、現地での取り組み事例について紹介されている。

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新製品・サービス紹介:グローミストを利用した高生産性トマト栽培

三浦 慎一

 夏の高温期に栽培するためには効果的な高温対策が必要である。本稿ではトヨハシ種苗(株)が開発したハウス内を加湿できるグローミストの概要と,これに炭酸ガス濃度制御を組み合わせた検討を行った研究農場での試験結果が紹介され,湿度コントロールの有用性が示されたと同時に,より効果的な制御法の必要性についても言及している。

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新製品・サービス紹介:栽培用ロックウール製品のリサイクルについて

北島 滋宣

 使用後の廃棄処理の観点などから、有機資材におされぎみのロックウール。その再度の普及拡大を目指して環境省の産業廃棄物広域再生処理の許可を取得した日本ロックウール(株)が取り組みはじめた、ロックウールのリサイクルについて紹介されている。

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新製品・サービス紹介:散乱光量差を指標として用いる高糖度トマト栽培向け給液制御システム

稲葉 雅章

 高糖度トマト栽培向けに,蒸散量に応じて給液を自動制御できるコントローラを商品化した.本コントローラは作物群落内外の散乱光センサの光量差を指標として,成育段階と受光量に対応した給液制御が可能であり,これまでの日射比例式制御のように成育段階に応じて頻繁に変更する必要のあった設定の手間を大幅に低減できる.また,LAN通信機能を標準装備することで,コントローラの効率的な管理とトータルコストの低減を実現でき,データロガーとの接続など,機能を拡張しやすい構成とした.

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特集—夏の高温対策:トマト栽培と水分生理計測,特に裂果発生機構への適用の可能性

池田 敬

 本稿では、著者の研究知見に加え,その周辺にいたるまで幅広い知見を盛り込んだトマトの水分生理の観点から裂果発生機構についてコンパクトにまとめて紹介している。

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特集—夏の高温対策:盛夏時の裂果を中心とした生理障害発生状況
~2010年夏を対象に実施したアンケートから~

糠谷 明

 2010年夏トマト生産者を襲った裂果。その実態を把握するため日本全国のトマト生産者に行ったアンケート調査をとりまとめ、栽培条件と裂果発生の関係とその原因などについて考察し、その防止対策について紹介している。

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特集—夏の高温対策:山形県のバラ切り花栽培におけるヒートポンプによる夜間冷房の効果

酒井 友幸、永峯 淳一*、佐藤 武義、伊藤 政憲

 山形県におけるバラ切り花栽培において,2010年夏秋期におけるヒートポンプによる夜間冷房がハウス内の温度と湿度や,切り花の品質と収量に及ぼす影響について調査した.その結果,夜間の温度を無処理の慣行ハウスより1~2℃低い20~23℃で管理することにより,切り花の品質と収量の向上に大きな効果があることを明らかにした.

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特集—夏の高温対策:ヒートポンプによるトマトの裂果防止

大石 直記

 高糖度トマトの栽培におけるヒートポンプを活用した裂果への影響について紹介している。その結果、果実に同化産物が供給され、肥大が起こりやすい条件と温室内の高温・多湿条件が重なるときに発生し、そのどちらかの対策のみではその防止は困難であるとの考えが紹介されている。

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特集—夏の高温対策:ハウスの高温対策

島地 英夫,岡澤 立夫,田旗 祐也

 夏季のハウスの高温は,作物の高温障害,生育遅延をもたらす.とくに昨年の夏は,昼間の最高気温が40℃,夜間においても25℃を超える猛暑であった. このような日中の高温対策技術として,遮光や換気,ミストやパッドアンドファンを用いた蒸発冷房が行われている.さらに,ヒートポンプが普及を始 めており,夜間に限ってその冷房が使用されている.ヒートポンプによって夜間のハウス内気温を、外気よりも5℃程度下げることによってヒマワリや シクラメンの生育に顕著なプラスの影響があることを明らかにした。

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特集—夏の高温対策:超微粒ミストを利用したトマトの夏期高温対策

川嶋 和子

 昼間の高温対策におけるドライミストの利用について検討した著者の研究が紹介され、ドライミストの利用による濡れの発生が抑えられ、細霧冷房に比べて効率的な本技術について紹介されている。

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連載ーやさしい環境計測ー:第4回 土壌水分,培地内水分の計測

岩崎 泰永

 土壌水分の表示方法と測定方法を解説した。土壌水分の表示方法には、土壌が含んでいる水分の量(水分含量)を表す場合と、土壌水分張力(ポテンシャル) を表す場合がある。水分含量の表示するときは、体積ベースの場合(体積含水率)と質量ベース(含水比)で表す場合がある。 土壌が水分を吸着する力を土壌水分張力やマトリックポテンシャルと呼ぶ。水分張力を水中の高さに換算してそのcm単位の値の対数をとったものをpF(ピー エフ)と呼び、土壌水分を表示する場合にもっともよく使われている。

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質疑応答:培養液等から病原菌を検出することは可能ですか?

渡辺 秀樹

 養液栽培では、病原菌が一度侵入すると培養液を介して施設全体へ急激に蔓延しやすくなります。ここでは、代表的な病原菌について、培養液等から検出する技術の現状について紹介します。

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書評:TOMATOES トマト

中野 明正

 トマト、エプ.ヒューベリンク著,監修(翻訳本:中野明正,池田英男,福田直也監修,農文協,2011年)に関する書評。紹介する本は、トマトを深く知りたい全ての人におすすめの最新情報が満載の学術・実用書である。著者兼編者のエプ.ヒューベリンク氏は、世界的にも著名なトマト栽培生理学研究の第一人者であり、オランダワーゲニンゲン大学准教授である.その他の著者も,M.E.Saltveit,M.M.Peet,A.A.Csizinsky,G. Welles氏など著名な研究者が名を連ねる.内容は,世界的なトマトの生産状況,育種,生産から加工まで,トマトという野菜の高生産技術に関する最新の情報が遺漏なくまとめられている.また,実際の増収に結びつくような知見がちりばめられている.

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海外文献の紹介:異なる窒素処理に対する水耕栽培したレタスの反応
 —成長および葉中硝酸含量について—

山西 相子

 水耕栽培システムにおいて,異なる窒素処理がレタス4品種の農業的特性と葉中硝酸含量に及ぼす影響について調査し、品種ごとに養分要求が異なること、葉中硝酸含量が高い時に生育が旺盛であたことが明らかとなった。

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海外文献の紹介:塩条件下で栽培したロケットの品質向上におけるプロリンおよび光の影響

清水 藍子

 生育中におけるプロリン葉面散布および貯蔵中の光の暴露が,NaClストレスにさらされたロケットの収量および品質に及ぼす影響について検討した.高塩濃度下(100mM NaCl)では,葉の硝酸,亜硝酸含量,抗酸化活性が低下した.塩処理した植物体では,プロリン処理により貯蔵中の葉の硝酸含量は減少し,カロテノイドおよびクロロフィル含量は増加した.明条件下での貯蔵により葉の硝酸含量が低下し,アスコルビン酸含量は高い値を維持した.

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