日本養液栽培研究会 | Hydroponic Society of Japan

ハイドロポニックス 第25巻 第2号 要約

巻頭言:難問が解ける

中野 明正

「世界一大きな問題のシンプルな解き方」という本を読んだ。タイトルからすると、農業には関係なく、ましてや養液栽培には関係ないと思われるが、その内容は、発展途上国の貧困を減らすために、現金収入を増やすための野菜栽培を導入するというものであり、その手段として廉価な灌水装置の普及に草の根で挑むというものであった。日本とある途上国の食料・農業問題、一見全く異なる問題も、似たような問題と解決法に帰結する場合もある。

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内外のニュース:第69回日本養液栽培研究会・千葉大会について

塚越 覚

平成23年10月13日に第69回日本養液栽培研究会・千葉大会がアミュゼ柏で開催され、全国より会員140名が参集した.今回は「動き出した植物工場プロジェクトと基幹技術としての養液栽培」をテーマとし、2課題の基調講演と6課題の話題提供が行われ、研究会の内容と翌日行われた、現地視察会の模様を報告する.

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内外のニュース:第12回養液栽培夏の学校報告

伊東ゆみ彦 大城美都

平成23年8月22日から26日の5日間,大阪府立大学植物工場研究センターにて,第12回養液栽培夏の学校が開催され,35名の参加者が養液栽培についての講義,和歌山県内の養液栽培施設の現地見学,簡易な装置の組み立て実習や培養液調製の実習などに取り組んだ.学生スタッフとして参加した著者が感じたことをまじえ,夏の学校の詳細について報告した.

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内外のニュース:園芸学会秋季大会に参加して

和田 瑞紀

平成23年9月24~25日に岡山大学において開催された園芸学会に参加した学生によるレポートである。500あまりの研究発表の中から、養液栽培に関する研究発表のダイジェストが、イチゴ、メロン、トマト、葉菜類、花卉、殺菌技術、量的管理に関して紹介した.

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内外のニュース:低投入・低排出型野菜生産技術に関する日中技術交流セミナーについて

岩崎 泰永

平成23年9月22日に野菜茶業研究所セミナー「低投入・低排出型野菜生産技術に関する日中技術交流セミナー」がタワーホール船堀(東京都江戸川区)にて開催された.近年,経済の発展が著しい中国では食料増産のために肥料や農薬の使用量が増大した結果,特に野菜生産地において土壌や地下水の汚染が深刻な状況にあり,環境負荷の少ない生産方式の開発に国を挙げて取り組んでいる.その一方で,省エネルギー型暖房システム(日光温室)など日本にとって参考となる技術が広く利用されている.本セミナーは,環境負荷を軽減するための日中両国の技術開発や普及の取り組みを報告した.

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内外のニュース:アグリビジネス創出フェア2011,アグロイノベーション2011

和田 光生

2011年11月30日~12月2日に幕張メッセで,同時開催された標記展示会では,日本養液栽培研究会も出展した.大阪府立大学による人工光レタス栽培システム,(株)日本ロックウールによるロックウールリサイクルのほか,ドライフォグ栽培など,注目された展示について紹介した.

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内外のニュース:APHEC Symposium 2011 -New Trend of Plant Factory of East Asian Countries-

淨閑 正史

2011年11月29,30日に千葉大学環境健康フィールド科学センターにてAPHEC 2011(アジア施設園芸・環境調節ワーキンググループ)が開催された.参加者数は,日本16名,韓国16名,中国11名,タイ2名の総勢45名であった.翌12月1日にはオプショナルツアーとして千葉大学園芸学部と幕張メッセで開催されたアグロ・イノベーション,アグリビジネス創出フェアの見学も行われた.本稿では,講演・発表内容や見学会の様子についてご報告した.

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内外のニュース:野菜茶業課題別研究会 果菜類の施設生産における省力技術の現状と課題

岩崎 泰永

平成23年11月24~25日に野菜茶業研究所が主催するシンポジウム「果菜類の施設生産における省力技術の現状と課題」がアスト津(三重県津市)にて開催された.国公立研究機関の研究者以外に,民間企業からも多数の参加があり参加者は150名を超え,関心の高さがうかがわれた.24日はシンポジウム,25日は三重県農業研究所の植物工場拠点の見学を行った.

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事例紹介:ミツバ栽培の現状について

高田 富二郎

近年、生産資材や,出荷経費の値上がりと,価格の低迷によりミツバの生産は厳しい状況にある.そこでミツバの良さを広く知ってもらい需要拡大を図る取組を開始した.また,生産が困難な高温期の栽培についての対策と,現状の報告,さらに,高値で取引されている白茎みつばを水耕栽培で生産可能かどうか検討したので報告した。

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事例紹介:キュウリつる下ろし栽培における誘引器具の開発

塚澤 和憲

高齢化に対応した生産性向上技術として期待される「キュウリとつる下ろし栽培」におけるつる下ろし作業の省力のために「誘引器具」を開発した。誘引器具を用いた作業時間は、当研究所で検討した結果では、慣行のクリップを使う方法に比べ誘引作業時間が2~3割短縮できた。

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事例紹介:養液を利用したキクの生産 (愛知県田原市におけるキクの生産)

長谷川 紀子

愛知県は全国のキク出荷量のうち28%を占める大産地である.愛知県内でも田原市は特に生産量が多く,施設を利用した輪菊・スプレー菊の周年栽培が主流である.日本一のキク生産を支える養液を使用した栽培について紹介した.

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研究の紹介:中国における環境保全型農業の現状と課題-推進政策、補助金の観点から-

今井 淳一

増産が常に求められる中国農業においても、農業に起因する環境汚染問題への対応、そしてより安全な食品に対する需要の高まりから、環境保全型農業が必要とされている。本稿では中国農業政策全般、そして中国で行われている代表的な環境保全型農業推進政策を簡潔に紹介し、増産と環境保全の間で揺れる中国農業の現状、そしてその中で環境保全型農業を進める方向に資すると考えられる方向性について論考した。

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研究の紹介:イチジクの養液栽培技術について

大川 克哉

現在千葉大学では,1樹当たりの結果枝数を1~2本とした小型のイチジク樹を根域制限条件下で超密植する非循環式養液栽培法について研究を行っている.この栽培法は,挿し木後,ロックウール粒状綿を充填したポットに苗を定植・育成し,翌年発生した新梢に果実を結実させるもので,挿し木翌年には成園化が可能である.

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研究の紹介:農業分野における太陽光発電の活用について 〜施設園芸における実証試験の開始〜

広本 直樹

太陽光発電プロジェクトの一環として、JA全農で取り組んでいるフレキシブル型モジュールの開発状況と、平塚市のハウスでの実証試験の概要を紹介し、設置コストやランニングコストに関する試算を紹介した.

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連載~オランダトマトの多収化を探る~:(4)多収化と収量構成要素

東出 忠桐

収量が決まるまでの過程に存在する光合成速度や着果、受光量、乾物生産、果実への乾物分配などの要素は収量構成要素とよばれる。重要な点はこれらの収量構成要素はばらばらに収量に関わっているのではなく、階層構造を取り、下の階層の要素によって上の階層の要素が決まる。つまり、トマトの新鮮果実収量は、乾物果実収量および果実乾物含量によって決まり、乾物果実収量は植物体の総乾物生産か果実への乾物分配によって決まる。

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新製品・サービス紹介:低段密植・養液栽培の初のトマト品種「すずこま」の紹介

JA全農 営農・技術センター 農産物商品開発室

JA全農と(独)農研機構 東北農業研究センターは,低段密植・養液栽培用の初のトマト品種「すずこま」を育成した.ここでは育成の背景・経過から品種特性を紹介した.

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新製品・サービス紹介:ハウス内環境測定器「プロファインダー」

斉藤 章

プロファインダーは,施設園芸での植物栽培に特化したハウス内環境測定器である.気温,湿度,CO2,照度を測定することができ,パソコン上で制御するロガーソフトにて,植物栽培上必要な単位である日平均気温や飽差に変換したり,データを収集してグラフにて表示をすることができる.

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特集:モデルハウス型植物について

今井 麻紀子

平成21年度補正予算で農林水産省が進めた植物工場の支援策の一つにモデルハウス型植物工場実証・展示・研修事業がある。本事業の目的など当施設における取組を含めご紹介する。農林水産省では、主に農業者を対象として植物工場の導入支援を行っている。平成24年度も引き続き支援を行っていくこととしているため、実際に導入をお考えの場合は、農林水産省本省又は、地方農政局までお問い合わせいただきたい。

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特集:農研機構植物工場つくば実証拠点のとりくみ

鈴木 克己

農研機構植物工場つくば実証拠点では、高温期には、細霧冷房、ヒートポンプにより、湿度制御と温度制御を行い、冬季には、ヒートポンプを作動させることで天窓が開く時間を最小限にして、CO2施用時間を延長させる「半閉鎖型」の環境制御技術を実証し、トマト、キュウリ、パプリカの多収を目指している。また、太陽光蓄熱施設を利用して温められた温水を、水熱源型のヒートポンプを利用することで、低炭素型の省エネ技術の開発を目指している。

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特集:植物工場三重拠点のいちおし技術

増田 実

植物工場三重拠点について、以下の項目に分けて説明する。 ①拠点の概要:植物工場三重拠点の施設内容および取り組みについて。
②実証するキーテクノロジー:三重県拠点で実証中の高度な環境制御について。
③達成目標:目標である「生産コスト3割縮減」を達成するための実証内容について。
④今後の展望:今後、植物工場三重拠点が取り組む課題およびその運営体系について。

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特集:農水省植物工場千葉大学拠点の概要といちおし技術

丸尾 達

農水省植物工場千葉大学拠点では,5つの太陽光利用型植物工場と2つの完全人工型植物工場を中心に,9つのコンソーシアムが設置され,実用規模の施設でトマト,レタスの多収・生産コスト縮減に向けた実証・展示・研修を進めている.コンソーシアム主体の取り組みが基本であるが,HPの積極的活用技術,CO2の効率的施用技術,植物工場データベースの構築・利活用等については拠点共通で取り組んでおり,多くの成果が期待されている.

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特集:愛媛大学拠点における植物工場の研究および普及・拡大に関する取り組みについて

羽藤 堅治

愛媛大学農学部の植物工場プロジェクトチームは,平成21年度に経済産業省の「先進的植物工場施設整備費補助金」と農林水産省の「モデルハウス型植物工場実証・展示・研修事業」に採択され,スピーキング・プラント・アプローチに基づいた太陽光利用型植物工場の研究を推進しており,これら成果を基に,植物工場における実証や人材育成を行っています.

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特集:大阪府立大学植物工場研究センター

和田 光生

大阪府立大学植物工場研究センターは,完全人工光型植物工場に特化した研究開発拠点として整備された.経済産業省の事業によって整備され,基盤技術研究開発を行うC20棟と農林水産省の事業によって整備され,実証・展示・研修を行うC21棟からなる.施設の概要,コンソーシアムの活動,現在実施中の共同研究プロジェクトについて概説する.

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連載:第5回 環境情報の収集と活用

岩崎 泰永

様々な環境情報を収集蓄積する方法を解説する.そして,生育や収量の情報と組み合わせて解析し,栽培環境の調節や肥培管理に活用する方法について考えてみる. 最近,「植物工場」が注目され,農林水産省や経済産業省など政府の支援を受けた実証事業が各地域で進行している.「植物工場」の定義は「環境及び生育のモニタリングを基礎として,高度な環境制御を行うことにより,野菜等の植物の周年・計画生産が可能な栽培施設」とされている(農林水産省).「植物工場」の技術開発の目標の一つは,従来の「勘と経験に基づいた」職人芸的な栽培技術から,「科学的根拠に基づいた」栽培技術への転換である.そのためには,環境情報と生育状況や収量などのデータを収集ならびに蓄積することが第一歩である.そして,それらを解析し,栽培環境の調節や肥培管理に活かすことがきわめて重要である.

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質疑応答:葉菜類の育苗を「苗テラス」で行うことで、どのくらい本圃生産量がUPしますか?

岡部 勝美

「苗テラス」で育成した苗は、「苗質がよい」「生育が早い」「再現性がある」「病虫害リスクが低い」などの特徴を持つ。「苗テラス」を導入したホウレンソウ養液栽培農家では、それまでより収穫までの日数が2~3日短縮し、年間作付け回数が16作から18作と増加した。サラダナ農家では栽培日数が5~10日短縮し、年8作が年9~10作と増加した。「無農薬栽培」の成功率も格段に高まった。

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書評:垂直農場-明日の都市・環境・食料

中野 明正

垂直農場(Vertical Farm)とは、いわゆるハイテク温室を物理的に積み上げたビルのような施設であり、居住地域に近い都市の中に設計するコンセプトである。土は使わずもっぱら水耕栽培であり、空中栽培(※いわゆる噴霧耕)で行われる栽培である。これにより食用、バイオ燃料といったあらゆる植物を育て、さらには、生きた浄水設備としてこれを使おうとういものである。

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海外文献の紹介:フランスならびにオランダの市場流通トマトの官能的品質:イタリア人消費者の嗜好性に関する研究

品部 京子

本研究では16品種のトマトを使って①果実の物理化学特性②食味官能特性の客観描写③消費者テストを行い,イタリア人のトマトの嗜好傾向を評価した.イタリア人消費者は,好みの異なる4つのグループに分けることができた.また,消費者のトマト嗜好性は,品種に特異的というよりも,一般的な傾向としては,カクテルトマトのように特定の品種が好まれる傾向であった.概して,トマト品種における消費者の嗜好傾向には消費者間でかなり異なっており,多くの消費者を満足させるには,市場に多様なタイプのトマトを置く必要があることが分かった.

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海外文献の紹介:光質の違いがキュウリのCO2同化、クロロフィル蛍光消光、カルビンサイクルに関与する遺伝子発現、炭水化物蓄積に及ぼす影響

金坂 直之

本研究では,LEDを用いて,光質がクロロフィル蛍光消光やカルビン回路に関わる遺伝子の発現に及ぼす影響を調査した.供試植物として,キュウリ品種‘Jinyou No.1’を用いて,本葉が4枚展開時に処理を開始した.紫色(P:波長ピーク394.6nm),青色,緑色,黄色,赤色,白色光の下で5日間栽培した.その結果,いずれも単色光の場合に光合成の活性が低下し,その原因としては,単色光の光質が,光化学系の活性やカルビン回路の酵素の発現や活性に影響を与えることで光合成に影響を与えるものと考えられる.

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