第54回日本養液栽培研究会
東京大会・2004総会


「第54回東京大会」の報告

「データが語る企業の養液栽培新技術」の第6回めである.今,注目されている技術や資材について,メーカーの研究者,技術者から具体的なデータをまじえて開発した商品や技術の発表が行われた.会場がほぼ満席となる状況であり,会場からも活発に質疑応答があった.最初の3課題は培養液殺菌資材/技術についてである.(株)サトーセンの伊藤氏は同社が開発した「オクトクロス」という培養液殺菌資材について紹介した.この資材はナイロン製の布に銀を担持させたもので,培養液中に浸せきすると銀がじょじょに溶出し殺菌効果をしめす.培養液に添加して利用できる農薬として初めて登録された資材である.伊藤氏は防除効果,殺菌のメカニズム,作物の生育への影響などについて説明した.関東天然瓦斯開発(株)の山口氏はヨウ素を用いた培養液殺菌技術について報告した.ヨウ素はヨードチンキやイソジンなとの商品名で医療用の殺菌薬としておなじみであるが,培養液殺菌への利用は初めてである.ヨウ素はpHによって形態が変化し,アルカリ性となると殺菌効果を失うという.殺菌効果,作物に対する影響,利用方法などについて紹介した.松下ナベック(株)の成田氏は弱酸性電解水を用いた培養液殺菌技術について紹介した.電気分解によって生成された電解水は次亜塩素酸(HClO)の多いpH5−6の弱酸性となり,次亜塩素酸の酸化作用によって微生物の膜を破壊し,エネルギー代謝や呼吸を阻害する.残留塩素濃度が0.8ppmとなるように,培養液に混入する.会場から「次亜塩素酸ナトリウムによる殺菌とどこがちがうのか」という質問がでた.電解によって電荷が存在するので,電解水の方が低い残留塩素濃度で効果が現れやすいとのことであった.以上,3課題は,熱や紫外線などと異なり,培養液中に殺菌効果を有する物質を直接溶け込ませる点で効果が安定していると考えられ,培養液の殺菌技術として期待が大きい.
最近はドリップチューブの利用が急増しており,ノズル(吐出口)のつまりが大きな問題となっている.大塚化学(株),宮浦氏はかん水チューブの洗浄剤「チューブクリーン」について紹介した. 株式会社誠和の佐藤氏は新しい肥料「ペンタキープV」の特徴や使用事例について紹介した.植物体内に存在し,クロロフィルの前駆体でもある5―アミノレブリン酸というアミノ酸を主成分とする.光合成能力の向上の他に耐塩性,耐寒性の向上にも効果があるとしている.大洋興業(株),長南氏は人工光閉鎖型苗生産装置「苗テラス」について紹介した.このシステムは千葉大学との共同開発で,プレハブ冷蔵庫に市販のエアコン,蛍光灯,炭酸ガス発生装置および生育棚を組み込んだ構造で, 高密度育苗が可能,苗質が良好で生育が早いことや季節変化など気象の影響を受けないことが特徴であるとしている.この苗は定植後も生育が早く旺盛であるという.研究会の最後はハウス被覆資材「タイキュート」の紹介で,MKVプラテック(株),田原氏より,フィルムの構造や特徴,展張方法について発表があった.





 今年度の東京大会は好評を頂いている企業による最新技術の発表「データが語る企業の養液栽培最新技術 パートVI」を行います.研究会に先立ち,2004年度総会も行われます.総会も含めて多数の方のご参加をお待ちしております.
期日

2004年5月20日(木)

研究会場 農林水産省共済組合 南青山会館 2F 3-4号会議室
東京都港区南青山 5-7-10
 Tel:03-3406-1365
 地下鉄 銀座線・半蔵門線・千代田線
 「表参道」下車  B3出口より徒歩5分(地図はこちら
参加費 会員 3000円,非会員 5000円
(総会のみ,研究会のみ参加の区別はしておりません.なお,総会は会員の方のみが参加できます.)
参加方法 参加の予約は必要ありません.当日会場にて受付をいたします.
(14:15からの研究会は100名の定員になりましたら恐縮ですが受付を終了させていただきます.)
開催日程 13:00〜14:00 総会
(来賓挨拶,平成15年度事業報告および決算,平成16年度事業計画および予算,役員改選)
14:15〜17:00 研究会
「データが語る企業の養液栽培最新技術 パートVI」
今回も,下記のようなさまざまな企業にご発表いただくことになりました.
情報収集に!討論に!積極的にご参加ください.
現在,発表が決定している内容は以下の通りです.(題名は全て仮題.順不同)
「新機能性肥料ペンタキープVの特徴とオランダでの使用事例」
 (株)誠和   斉藤 章(さいとう あきら)
「苗テラスでの苗生産と本圃での生育」
 太洋興業(株)  中南 暁夫(なかみなみ あきお)氏
「培養液殺菌用オクトクロス,使用登録通る!!」
 (株)サトーセン  伊藤 克彦(いとう かつひこ)氏
「長期展張高機能複合フィルム‘タイキュート’の開発と特性」 
 MKVプラテック(株)  田原 芳明(たはら よしあき)
「チューブ洗浄剤“チューブクリーン”」
 大塚化学(株)栽培研究センター  宮浦 紀史(みやうら としふみ)氏
「ヨウ素を用いた循環式養液栽培培養液の殺菌技術の開発」
 関東天然瓦斯開発(株)  山口 秀幸(やまぐち ひでゆき)氏
「弱電解水を用いた培養液殺菌と培養液リサイクル技術の開発」
 松下ナベック(株)  成田(なりた)氏

お問い合わせ先

日本養液栽培研究会事業担当 塚越 覚(千葉大学フィールド科学センター)
Tel&Fax:04-7134-8427,E-mail:tsukag@faculty.chiba-u.jp

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