第58回日本養液栽培研究会京都大会・2006年度総会

〜研究会テーマ:栽培現場からのチャレンジ〜


「第58回京都大会」の報告

 総会に引き続いて,「栽培現場からのチャレンジ」をテーマとする研究会が開催された.以下はその抜粋.

現場から株式上場 −その考え方と実際−
株式会社ホーブ 代表取締役社長 高橋 巌 氏
 四季成り性のイチゴ品種の作出に伴う苗販売の拡大,果実生産量の拡大により,果実を販売する販路の拡大も行う必要に迫られた結果,業務用イチゴの中卸業者の買収,物流システムの確保を行い,育種,苗生産,生産者への技術指導から物流,営業による販売促進まで行う会社への転進を図り,必然的に資金調達のために株式上場に行き着いた.上場した結果,全国同時の情報開示や会社法に基づいた財務の厳密な管理と監査のための多大な資金およびそのような業務を専門とする人材の獲得も必要となった.さらに同様に経営の安定化を目指して産地の拡大や販売方法の多様化にも取り組んでいる.また,銀行以外にも証券会社や投資ファンドなどさまざまな金融機関から資金調達が可能になったことや,知名度の上昇により,多方面から優秀な人材を集めることができる.

廃液を出さない養液管理手法に向けた実践と経営効果
有限会社育葉産業 代表取締役 栗田 洋蔵 氏
 商品の価値を高めるには,(1)おいしい環境で育っているのか?(2)環境への付加は少ないか?(3)安全なのか?といったような物語が必要である.テーマの「廃液を出さない」というのは上記(3)の点に相当し,基本的には培養液の組成が植物の生育に伴って変化しないような管理を,専用のコンピュータによりオンラインでおこなっている.その結果,肥料代が極めて安価にすんでいる.栽培は播種→仮植→定植として,2種類の栽植密度のパネルを使用することで,年間を通じて一定の生産量を維持している.また,出荷調整は手作業で行い,高品質を維持している.以上のような栽培法を駆使することにより,棚持ちの良い製品を安定して生産することに成功し,日本一高い単価を得ることができている.

サンラックシステムによるイチゴ栽培
静岡県 イチゴ生産者 三倉 直巳 氏
 多くのイチゴ生産者が望む定植と育苗を省力化するシステムであるサンラックシステムを開発した.これは250cc容量のD型のポットが連結されたプラスチックトレイを用いたシステムで,培地は細粒綿を使用する.栽培ベッドの側面にたトレイ台にプラスチックトレイをのせ,ランナーを受ける.これを適宜切り離し,育苗する.育苗後,これをそのまま栽培ベッドへ置き,チューブで潅水してそのまま収穫する.このように実質的に苗場が不要となり,定植作業も不要となった結果,大幅な省力化を果たすことができた.環境制御さえ間違わなければ,高糖度で締まった果実を楽に6t/10aは収穫が可能である.本圃の資材費は10aあたり220〜250万円(給液装置は除く)である.システムの特許取得および栽培試験は株式会社オオツと共同で行い,販売は株式会社大仙が行っている.

写真 総合討論の様子.
   右から高市氏(座長),講演者の高橋氏,栗田氏,三倉氏




養液栽培の現場では経営も含めて独自の手法で成功・チャレンジされている方達が存在します.そこで,そのような方達の手法を紹介するとともに,それらを科学的に考察したいと思います.今回のような企画によって,生産者・普及関係者へ新しい技術の情報を提供する場になることはもとより,メーカーにとっての新たな技術開発や研究者にとっての新たな研究テーマのヒントを与える場にもなれば幸いです.

期日

2006年5月19日(金)

研究会場 京都府民総合交流プラザ(京都テルサ) 第1会議室
参加費 会員の方:3000円   非会員の方:5000円
予約の必要はありません.当日会場にて受付いたします.
プログラム 13:00〜14:00 研究会総会
(来賓挨拶,平成17年度事業報告および決算報告,平成18年度事業および予算計画)

14:15〜17:00 研究会 「栽培現場からのチャレンジ」
講演予定者
 北海道 株式会社ホーブ 代表取締役社長 高橋 巌 氏
            「現場から株式上場 −その考え方と実際−」
 (京都からの話題提供で予定しておりました講演は講演者の都合により中止になりました.代わりに上記の講演を企画しました.本講演は中止された講演にもまして会員の皆様の参考になることと思いますので,ぜひご参加ください.)
 大分県 栗田 洋蔵 氏 「廃液を出さない養液管理手法に向けた実践と経営効果」
 静岡県 三倉 直巳 氏 「サンラックシステムによるイチゴ栽培」
会場案内 京都テルサ(京都府民総合交流プラザ)
〒601-8047 京都市南区新町通九条下ル
【TEL】075−692−3400         
【URL】http://www.kyoto-terrsa.or.jp/

お問い合わせ

日本養液栽培研究会運営委員
伊達修一(京都府立大学)
【TEL/FAX】075-703-5611
【e-mail】s_date@kpu.ac.jp 
 なるべくFAXまたはe-mailでお願いします.

地図