日本養液栽培研究会 | Hydroponic Society of Japan

第60回日本養液栽培研究会・東京大会・2007年度総会
〜研究会テーマ:今求められる養液栽培のスーパーテクノロジー〜

第60回日本養液栽培研究会・東京大会
「今求められる養液栽培のスーパーテクノロジー」を開催して

事業・企画部長 丸尾 達

今年度の総会と同時開催しました東京大会は、記念すべき第60回の研究会ということもあり、企画の段階からかなり考えました。といいますのも、ほぼ同じような内容で、参加費も高額なSHITAシンポジウム(本年1月の第17回SHITAシンポジウムへは本会も特別協賛しております)には、毎回300名を越える参加者があるのに対し、本会の研究会は、最近は参加者が少ない大会が多いからです。過去の大会でもそれなりに知恵を絞って企画してきたのですが、「何か」が足りなかったのでしょう。

その「何か」について議論したのですが、参加者は「イノベーション」、「新発見」、「新技術」を求めて研究会に足を運ぶのではないかと考えました。養液栽培はこの20年間で、かなり普遍的な技術になってきており(本会の貢献が大きいと思います)、それなりに成熟した技術として捉えられているのではないでしょうか?「普遍的な技術」、「研究会に行かなくても、会誌や他の雑誌などを見れば容易に理解できると意外性の少ない課題」に対しては、わざわざ遠くまで足を運んで見たり聞いたりする価値を見いださない会員が増えているのではないでしょうか?もちろん、養液栽培は完成された技術ではございませんし、日々進歩しておりますし、残念ながら十分な知識と経験をお持ちでない生産者・研究者も少なくないと思いますので、実際はそのような課題が重要であると思います。しかし、多くの方はそのようには考えず、「もう分かっている理論や技術」、「完成された技術」と考えているのではないでしょうか?

そのような議論があり、今回は「今求められる養液栽培のスーパーテクノロジー」というテーマに決めました。開催日は、例年とほぼ同時期の年5月18日(金)ですが、会場を一新し(田町キャンパス・イノベーションセンター 国際会議室)、新たな取り組みという姿勢を強調致しました。

実際は研究会テーマが決まった後、個々の話題提供を決めるのが大変でした。時間的な制約もあり今回も十分な情報を集めることができませんでしたが、「現段階ではまだ確立していないが、今後の養液栽培・施設園芸を左右する重要な技術になりうるスーパーテクノロジー」を念頭に選定させて頂きました。おかげさまで、今回は会場には入りきれないほどの参加者が集まり、大成功だったと思います。発表課題の概要は以下のとおりです。

「Dトレイシステムを利用したトマトの超少量培地栽培」

静岡大学農学部 糠谷 明 氏、静岡県菊川市 三倉 直己 氏

イチゴ育苗・栽培用に導入されたDトレイは、1セルあたり200mL程度の容量ですが、この中にロックウール粒状綿等の培地を詰めてそれだけでトマトを栽培する革新的な栽培技術への取り組みが紹介されました。培地容量が少ないだけに、生育制御の幅が拡がり高糖度トマトから多収生産まで多様な栽培が可能。

「冷蔵苗のモジュール化によるイチゴ高密植移動栽培システム」

生物系特定産業技術研究支援センター 園芸工学研究部 林 茂彦 氏

欧州と較べて大幅に収量が少ないイチゴに対し、長・短期株冷蔵技術を確立し、モジュール化した苗を移動栽培システムに高密度で定植することにより、収量レベルを格段に向上させようとする技術です。課題も多いのですが、実現すれば飛躍的な収量増が安定的に得られるまさにスーパーテクノロジーになるでしょう。

「超高濃度炭酸ガス施用技術によるトマト・ピーマン栽培」-温室内における炭酸ガス施用方法と注意点-

ネポン(株) 営業本部農用部 今井 雅夫 氏、高知県吾川郡春野町 雨森 克弘 氏

従来,1000ppm程度の濃度が基準であった炭酸ガス施用ですが、四国を中心に高濃度施用の事例があります。今回の発表では、まずメーカーの立場から、高濃度施用の際の注意点と、機器の安全な使用法について発表して頂き、本技術の実際を栽培者の立場からこれまでの経験を中心に発表していただきました。

「進化し続ける植物工場」

(株)みらい 嶋村 茂治 氏

従来はハードの開発が中心的であった植物工場ですが、基本要素である養液栽培技術の開発に力を入れ、蛍光灯など安価で一般な汎用機器を用いて、高品質の野菜を安価で供給し、補助金なしで採算がとれる植物工場を目指す取り組みが紹介されました。店舗と植物工場が一体にした新コンセプトも注目されているようです。

「新素材 エクセルソイル(固化培地)の特徴と可能性」

みのる産業(株) エクセルソイル事業部 藤井 一徳 氏

養液栽培の育苗・栽培培地には、様々なものが提案されていますが、エクセルソイルは特殊なポリエステル繊維を利用してどんな培地でも固めてしまう「固化培地」です。本技術は、根鉢形成以前の若苗定植や有機系培地を任意の形状と物理性で成型することが可能になるまさにスーパーテクノロジーです。

「静岡発・施設園芸生産コスト5割削減技術の提言」-平成18年度低コスト施設園芸緊急実証事業の結果から-

静岡県中遠農林事務所 堀内 正美 氏

暖房コストの高騰などで温室メロン等の採算性が低下しているが、静岡県では他県に先駆けてコスト5割削減技術を模索しました。幾つかの新技術を組み合わせ、従来の栽培方法を見直すことでコストを大幅に削減する技術を検討・一部実証したものです。検討結果については、報告書の形で当日の参加者にも配布されました。

写真
盛会だった東京大会の様子

私がいうのもおかしいかも知れませんが、いずれの課題も大変興味深い内容で、参加者の方も大いに満足されたのではないかと感じました。残念ながら、十分な発表時間、議論の時間を提供することができず申し訳なかったのですが、演者の皆様の言葉の端々から養液栽培に対する熱意と情熱が伝わってきました。

今回の企画を通じて、まだまだ埋もれている「スーパーテクノロジー」を掘り起こすことが、会の活性化につながるものと思いました。皆様もどしどし自らの取り組む「スーパーテクノロジー」をご提案下さい。

昨年夏に立ち上がったスーパーホルト・プロジェクトでは,養液栽培技術がキーテクノロジーになっています。本研究会のメンバーは,同プロジェクトの各分野で先導的な役割を果たしており,ますます目が離せなくなってまいりました。そのような中,今回の大会では,注目すべき養液栽培の新技術に関する課題を企画しました。大会に先立ち2007年度総会も行われますので,多数の方のご参加をお待ちしております。

期日 2007年5月18日(金)
会場 田町キャンパス・イノベーションセンター国際会議室(下図の新会場になりました。)
開催日程

13:00〜13:30
総会 (平成18年度事業および決算報告,平成19年度事業および予算計画)

13:45〜17:00
来賓挨拶,研究会 『今求められる養液栽培のスーパーテクノロジー』
スーパーホルト・プロジェクトのようなオールジャパンの技術開発が進められる中で,養液栽培にも革新的・独創的な技術開発が求められております。今回の研究会では,研究開発が進められ,実用化が進む技術のなかで,独創的な研究開発の話題提供を企画致しました。いずれも大変興味深い内容ですので,是非積極的にご参加ください。

内容(話題提供)
1)「Dトレイシステムを利用したトマトの超少量培地栽培」
  (静岡県 三倉 直己氏)
2)「冷蔵苗のモジュール化によるイチゴ高密植移動栽培システム」
  (生研センター 林 茂彦氏)
3)「超高濃度炭酸ガス施用技術によるトマト・ピーマン栽培」
  (高知県 雨森克弘氏・ネポン(株) 今井雅夫氏)
4)「進化し続ける植物工場」
  ((株)みらい 嶋村 茂治氏)
5)「新素材 エクセルソイル(固化培地)の特徴と可能性」
  (みのる産業(株))
6)「静岡発・施設園芸生産コスト5割削減技術の提言」
  (静岡県農業試験場 堀内 正美氏)
参加費 会員の方:3,000 円 会員以外の方:5,000 円
(総会のみ,研究会のみ参加の区別はしておりません。なお,総会は会員の方のみが参加できます。)
参加方法 予約は必要ありません。当日会場にて受付をいたします。
(13:45からの研究会は100名の定員になりましたら,恐縮ですが受付を終了させていただくことがございます。)
会場案内 地図
キャンパス・イノベーションセンター(東京地区)
東京都港区芝浦3-3-6  Tel:03-5440-0920
http://www.zam.go.jp/e00/e0000900.htm
・JR山手線・京浜東北線 田町駅(徒歩1分)
・都営三田線・浅草線三田駅(徒歩5分)
新しい会場になりました。お間違えのないようご注意下さい!!
(会場に駐車場・食堂・売店はございません。)
問合わせ先 日本養液栽培研究会事業担当
塚越 覚(千葉大学フィールド科学センター)
Tel&Fax:04-7137-8170,E-mail:tsukag@faculty.chiba-u.jp
(なるべくFaxまたはE-mailでお願いします)

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