日本養液栽培研究会 | Hydroponic Society of Japan

第60会日本養液栽培研究会・東京大会
「今求めれられる養液栽培のスーパーテクノロジー」(2007/05/18、田町・キャンパスイノベーションセンターにて)に参加して

通信員 漆山喜信(宮城県・農業園芸総合研究所)

以下に興味深く思われた発表について感想をかいてみました。

「Dトレイシステムを利用したトマトの超少量培地栽培」(静岡大学糠谷氏、菊川氏 三倉氏) Dトレイシステムは、D型ポットを連結したトレイを用いた栽培方法であり、培地容量が200mL/株と少ない点が最大の特徴であった。収量も十分確保でき、果実のBrix糖度を容易に高めることができるなど、実用的な問題はないように思われた。生産現場においては、コスト面や作業性を考慮して、少量培地耕に興味がある方が多いので、普及の可能性が高いと感じた。培地が少量であると、ハウス内気温と連動して培地温が変化しやすい可能性があり、夏期の生育への影響について興味がある。

「冷蔵苗のモジュール化によるイチゴの高密植移動栽培システム」(生研センタ 林氏)移動ベンチを用いることにより、12500本~2000本/10aの高密植を実現でき、また冷蔵苗等を用いた植え替え栽培により、イチゴを周年で供給することを目指した研究で、筆者も参加している。移動ベンチ部分の基本構造は、完成しており、作動状況はスムーズであった。今後は、現在の高価なアルミ部材ではなく、安価なハウス資材や足場管を用いて、低コスト化を目指していることが報告された。給液を底面のみとすると装置の構成を簡略化できるが、栽培中に培地上部域のEC値が上昇する問題があり、現在、地上給液との組み合わせの基礎的なデータを蓄積中とのことである。近年、A重油、灯油の価格が高騰しているなかで、ハウスの集約化に繋がる密植栽培にさらに期待がもたれるであろう。

「超高濃度炭酸ガス施用技術によるトマト・ピーマン栽培」(ネポン(株)今井氏、春野町 雨森氏)はじめに、ネポン(株)今井氏より炭酸ガス発生装置の適正な使用への注意換気があった。日本産業衛生学会によると人間の作業環境での二酸化炭素勧告値を5000ppmと定めているそうである。炭酸ガス発生装置には、各種方式があり、栽培規模により適した方式が違い、初期設備投資だけではなく、ランニングコストについても熟慮する必要があると感じた。炭酸ガス濃度を高く管理した場合には、天窓開時でも二酸化炭素施用の効果が得られている事例があり、今後さらに注目される使用方法と感じた。

「進化し続ける植物工場」((株)みらい 嶋村氏)植物工場と販売店を組み合わせるアイディアは、独創的なものであり、関心していた方が多かったように感じた。また商店街の空き店舗を活用するなど、よいアイディアと感心した。栽培技術は、完全にマニュアル化しているようであった。植物工場の特性や栽培のマニュアル化のしやすさから葉菜類が対象となっているが、果菜類の可能性についても気になる。

その他に「新素材 エクセソイル(固化培地)の特徴と可能性」(みのる産業藤井氏)、「静岡発・施設園芸生産コスト5割削減技術の提言」(静岡県中遠農林事務所、堀内氏)からもそれぞれ興味深い発表があったが、ページの都合で割愛する。

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