pHとは養液中の水素イオン(H+)濃度で、H+が多い(水酸イオンOH-が少ない)場合はpHが下がり、
H+が少ない(水酸イオンOH-が多い)場合はpHが上がります。
原水の重炭酸HCO3−濃度が高い場合は、pHが下がりにくく、微量要素欠乏を招きます。
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重炭酸濃度の測定方法 |
原水100mlにpH計を浸けて、0.01N(規定)のH2SO4をよく撹拌しながらpHが 4.5になるまで滴定して、その滴定数字に対して「6.1」を掛ける数字が重炭酸 濃度(ppm)です。 滴定量×6.1=重炭酸濃度 例えば、HClの滴定量が16mlであった場合は、16×6.1=97.6ppm です。 |
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重炭酸はあまり低くい場合は、pHの上下が大きくなり不安定になるため、30〜50ppm程度が好ましいとされています。
・正りん酸(H3PO4)と硝酸(HNO3)で中和させる(下図参照)。
A(1号タンク) |
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B(2号タンク) |
りん酸による中和 H3PO4 ↓ H+ +H2PO4- ↓ H+ +HCO3- → H2CO3 |
硝酸による中和 HNO3 ↓ H+ + NO3- ↓ H+ +HCO3- → H2CO3 |
→ H2CO3(炭酸分子)・・・・・・pHに影響を与えない。
・通常、原液タンクA(1号)タンクに「リン酸」、硝酸カルシウムの入っているB(2号)タンクに
硝酸を、中和量(下記表)として半分づつ入れます。 但し、等量入っても「リン酸」濃度が上昇する
のが普通で、重炭酸が高い場合には硝酸の比率を高める方が好ましいですが、万が一Aタンクが事
故で流入しなくなった場合、硝酸が多く入りすぎてpHが「3」程度まで下がる恐れがあるので、
注意が必要です(硝酸の場合の方がpH低下力が高い)。
表 酸の種類と重炭酸濃度低下量(原水1トンに1g加えた場合)
濃度 |
重炭酸濃度低下量 |
(注)硫酸は混ぜる時、激しく反応するためここでは使用してません。 |
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硝酸 HNO3 |
61.0% 65.0 67.5 70.0 37.0 |
810ppm 876 916 958 282 |
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りん酸 H3PO4 |
75.0 85.0 90.0 |
738 892 978 |
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硫酸 H2SO4 |
95.0 98.0 |
2170 2240 |
例えば、重炭酸が140ppmあって40ppmに下げたい場合、下げる100ppm分を硝酸で50ppm、りん酸で50ppm下げること
になり、硝酸61%であれば原水1トンに対して50ppm÷810ppm×1000ml≒62mlとなります。原水タンクの濃度が100倍液で
200リットルあるとすれば、20トン分の養液を作成することになるので62ml×20トン=1240ml(1.24g)を原液タンクに混ぜる
ことになります。
(参)ECについては、肥料の場合その大部分がイオンの形に解離(電離)しており、そのイオンが多いほど電気を通します。
そしてその電流を測る機械がEC計です。
肥料が完全に溶ければ総肥料濃度とECは比例します。各肥料のイオンの濃度(me/g)を合計した値とECの値には、
EC≒(全me/リットル)÷20の関係が成立します。