「第6回 養液栽培夏の学校 2005」
−日本養液栽培研究会主催

第6回養液栽培技術研修会「養液栽培2005」概要報告



平成17年8月1日(月)〜6日(土)にかけて,平塚にあるJA営農・技術センターにおいて36名が参加して開催された。今回は「初級者コース」という位置づけであったが,8月1日午後と2日午前は,養液栽培になじみがない方を対象として,「初心者コース」を開設したことが大きな特徴である。ここでは,文字通り養液栽培の初歩の初歩を身につけて頂くことが目的である。養液栽培とは?培地とは?培養液とは?ということについて,講義や実習をおこなった。
(研修1日め)
養液栽培の位置づけなど概略的な講義を聴いた後,ウオーミングアップをかねて早速実習に。養液栽培の基本形である湛液水耕,NFTシステムののデモ装置を間近にみた後は,6〜7名ずつの班に分かれて,固形培地耕の栽培ベッドを製作した。ロックウール,やし殻繊維,ピートモスなど,用意されたいろいろな資材から好きな資材を選んで栽培ベッドにつめ,イチゴの苗を定植し,実際にポンプとかん水チューブで栽培ベッドにかん水した。
(研修2日め)
朝から講義となって培地や培養液についての説明,語句説明があった。初心者コースとしては難しすぎる内容となってしまったことが反省すべき点として残った。2日め午後からはいよいよ初級コースの開講となり,糠谷副会長より養液栽培の理論や主要な方式について専門的な講義が行われた。その日の夕食には,篠原会長も参加して懇親会となった。研修生の皆さんはすでに顔見知となって和やかな雰囲気であった。
(研修3日め)
午前中は篠原会長より養液栽培の発展と現状について講義があり,ついで培養液の作成や給液の制御についての説明と実習を行った。タイマーや電磁弁,ECセンサやpHセンサの接続や動作について実物を見ながら確認した。

 3日目の実習風景

午後は培養液の基礎についての講義で,計算もかなりあり,多少の疲労が見えた様子となった。その後,バラの養液栽培を全国に先駆けて導入した佐野さんから,実際の経験にもとづいた講義をしていただいた。

 バラ栽培家 佐野幸一さん

(研修4日目)
午前中に培養液に関する基礎的な知識(原水の水質基準,重炭酸濃度の測定と調整,培養液温度,溶存酸素,残留塩素など)と実際の培養液の作り方,調整の仕方,給液管理,播種と育苗についての講義を行った.短時間での早口の講義に受講生には次第に疲れが見え始めたか?

 単肥配合による培養液の作成実習

 午後からは,実際に単肥を用いて培養液の作成.硝酸カリウムは確かに溶けにくいし,溶かしていくと水が冷たくなる,などを実感してもらった.実習場所の水道水を使用して培養液を作成すると,pHはおよそ6.5ぐらいであるのに対して,脱塩水(水に溶け込んでいる塩類をきれいに取り除いた水)を用いて培養液を作成すると,pHは約5.8となった.これは水道水に含まれる重炭酸の影響か?pH6.5程度なら許容範囲であるが,恐るべし重炭酸.さて,実習の後は,再び計算問題,分析に基づく培養液の調整.ゆっくりと詳しい解説で比較的理解しやすかったのではないだろうか.しっかりした復習と実践が必要である.最後は,静岡県のイチゴ栽培家三倉さんの講義.研究熱心な三倉さんの話は非常に興味深く,みんな熱心に聞き入っていた.

 イチゴ栽培家 三倉直己さん

(研修5日目) 見学会



1. つくば科学博で1株に2万個のトマトをならせたハイポニカの水平放任栽培.



2. 全国に先駆けてバラのロックウール栽培を導入した佐野さんのバラ.



3. ヤシがらを培地としてのイチゴ栽培.この時期は育苗中で実際栽培が見られないのがやや残念.



4. 神奈川県の養液栽培でリーダー的存在の西山さんのヤシがらを培地に用いたトマトとキュウリ.様々な栽培哲学をお話し頂く.高温,多湿のハウスに研修生はぐったり?



5. 最後に,DFTによるコマツナ,ルッコラ,セロリの栽培.水耕の基本的装置.夏季にはやはり溶存酸素の低下が課題か?



 この日の夜は,懇親会,みんなでこれまでの労をねぎらい,楽しいひとときを過ごす.

研修6日目
 いよいよ最終日.これまでの復習を行う.最後に中級編の問題の一部を披露.これは難しい.しかし,「がんばれば必ず出来るようになります」,の言葉に励まされたではないだろうか.
 そして,修了式.みんな笑顔で修了証書を受け取り終了した.今回は初心者コースという初めての試みを行い,講師側にもやや戸惑いがあったが,終了後のアンケートでは,ほとんどの方から概ね満足との回答を頂いた.今年の教訓を元に来年はさらに充実した研修を作り上げていきたい.
 来年は,中級コースの実施も予定している.今後も研修を充実したものとし,養液栽培のますますの発展に寄与できればと考えている.
「夏の学校2005」に関するご意見,ご質問は,和田(wadoo@plant.osakafu-u.ac.jp)まで



一人ずつ修了証書をもらい、挨拶

 日本養液栽培研究会では,今年も養液栽培の基礎的な知識・技術の習得を目的とした「養液栽培夏の学校(初級コース)」を下記の要領で開催致します.併せて,初級コースに参加される方のうち,養液栽培をまったくご存じない方のために,基本的名称・用語などを理解して頂くための初心者コースを,前日より1泊2日で開催します.奮ってご参加下さいますようお知らせ致します.

このホームページから申込書とカリキュラムをダウンロードすることができます.
開催期間 2005年8月1日(月)〜6日(土)
場所 JA全農 営農・技術センター
〒254-0016 神奈川県平塚市東八幡5-5-1
参加費 初級コース (8月2日〜6日)会員40,000円,非会員45,000円
初心者コース(8月1日〜2日)無料
*初心者は,初級コースに参加するための予備知識として,基本的な名称や用語を理解して頂くためのコースです.初心者コースのみの参加はできません.
**参加費には研修費,テキスト資料代,実習資材費,見学用バス代などが含まれますが,宿泊・食事代などは含まれません.
申込方法 (1)申込み用紙の送付
Faxの場合は参加申込書に必要事項を記入の上,Eメールの場合は必要事項を明記の上,「静岡大学農学部 糠谷 宛」にお送り下さい.
   Fax:020-4668-2317 
   Eメール:abanuka@agr.shizuoka.ac.jp

(2)参加費の振り込み
同時に,住所,氏名,電話番号,会員・非会員の別および「夏の学校参加費」と明記の上,郵便振替で参加費(会員40,000円 非会員45,000円)をお振り込み下さい.
   郵便振替口座  口座番号:00900-7-181123
           加入者名:日本養液栽培研究会

*一旦参加申込みが受理された後は,参加費の返金には応じられませんので了承下さい.代理の方に参加頂くことは可能です.
定員 25名(先着順.定員に達ししだい締め切り.参加頂けない方には,ご連絡の上,振り込まれた参加費を返金させて頂きます.)
申し込み締切 2005年6月30日(必着)
宿泊と食事 宿泊を希望される方には全農の宿泊施設(営農・技術センター内,1泊4,000円)が利用できます.研修期間中の食事は,朝400円,昼500円,夜900円でご用意できます.
宿泊,食事は,いずれも予約制となります(料金は受付時に徴収します).
研修内容 初心者コース:
養液栽培って何?,写真で見る養液栽培,養液栽培装置の基本,培養液って何?,培地ってどんなもの?,言葉の勉強,電気・水道工事の基礎など.

初級コース:
養液栽培の理論,養液栽培の主要方式と特性,養液栽培の発展と現状,培養液の基礎I・II,培養液の処方と単肥配合,実際の培養液管理,養液栽培の播種と育苗,機器の取り扱い,栄養診断,処方の補正,養液栽培の経営など.
講師(予定) 篠原 温(千葉大学)
糠谷 明(静岡大学)
丸尾 達(千葉大学)
塚越 覚(千葉大学)
伊達修一(京都府立大学)
和田光生(大阪府立大学)
深山陽子(神奈川県農業総合研究所)
三倉直己(イチゴ栽培者)
岩崎泰永(宮城県農業・園芸総合研究所)
佐野幸一(バラ栽培者)
問い合わせ
不明な点,ご質問は下記までお願いします.
静岡大学農学部 糠谷 明
fax: 020-4668-2317
E-mail: abanuka@agr.shizuoka.ac.jp