日本養液栽培研究会 | Hydroponic Society of Japan

養液栽培における培地とは何か?

岩崎泰永(宮城県農業園芸総合研究所)

1)培地の定義

広くは「微生物や動植物を育成するための資材,物質あるいは空間」とされている。

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植物組織培養では,寒天に植物ホルモンや無機栄養素を溶かしたものを培地として使う。

農業,施設園芸の分野では「根の活動する範囲をある程度制限し,人工度の極めて高い栽培における根の活動範囲」と定義される。この意味では,「土壌はたくさんある培地のひとつ」と考えることができる。養液栽培では,1)水,培養液を培地とする方式(湛液水耕,NFT(Nutrient Film Technique)など),2)何らかの固形培地を用いるもの(ロックウール耕,各種培地耕)がある。

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図2.水耕(湛液水耕,NFT),固形培地耕(ロックウール耕)の模式図


2)大地から切り離された人工的な世界

養液栽培の大きな特徴は,根域(根の張る部分)が発泡スチロール製の型枠などで,囲われていることである。養液栽培の根域は「大地から切り離された人工的な世界」ということができる。容積が限られているので,肥料成分の供給量(培養液濃度)を調節することによって生育をコントロールしやすい一方で,根域のpH,ECが変化しやすい,水分や温度が変化しやすいといった特徴がある。

3)水耕(湛液水耕,NFT

水を培地とするシステムは「水耕」と呼ばれ,代表的なシステムは湛液水耕とNFTである。両者は培養液が深いか浅いかの違いで区別されるが,中間的なシステムもある。養水分の吸収効率が高く,作物の生育は多くの場合固形培地耕よりも速い。ミツバ,チンゲンサイ,コマツナ,リーレタス,ホウレンソウなどの葉菜類で多く果菜類ではトマトで多い。

4)固形培地耕

ロックウールを培地とするロックウール耕が最も多く普及しているが,最近では有機質培地を用いる方式も増加している。いくつかの培地資材をブレンドして,自分の使いやすい物理性や化学性の培地を作成して利用している場合もある。トマトやイチゴ,キュウリなどの果菜類やバラで多い。固形培地耕で利用される培地の多くは土壌よりも透水性が良好で,培地を構成する粒子間隙や粒子内部にゆるやかに水分を保持しており,植物が利用できる分量が多い。固形培地があるので土耕の感覚が応用できることも特徴のひとつである。

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