日本養液栽培研究会 | Hydroponic Society of Japan

農作業支援ロボットを用いたトマト3段密植栽培システムの開発と課題

太洋興業株式会社 農業開発部
土屋 和

トマト低段密植栽培においては、野菜茶業試験場で開発された1段密植栽培(保水シート耕方式)が九州地方で現地導入されている。これに比べ栽植密度は低くなるが、より多収の可能性がある3段密植栽培システムを開発中である。以下にその現状と課題をご報告したい。

1段密植栽培に比べ3段密植栽培では本圃在圃日数の長期化による作付け回数低下がおこる。このため、本葉7~8枚程度の開花前の苗を定植することで、本圃在圃日数を少しでも短縮することが考えられる。閉鎖型苗生産システム(苗テラス)で育苗した本葉4~5枚のセル苗を2次育苗圃に移植を行い、本葉7~8枚まで育成を行う。この場合、高温期においては着花不良や徒長が起こりやすく、環境調節や培養液管理によって問題を回避し良質な苗を育成する必要がある。

これらの方法により年3.5作程度の本圃作付けを想定しているが、作期ごとに個別の品種利用が可能であるため、低温期には早生系で生育や果実肥大の早い品種、高温期には果実熟期が遅く肥大が見込まれる品種などの選択が考えられる。また短節間性のものなど低段密植栽培に適する品種育成も一方で行われており、このような選択肢の中から時期に応じた選定を行い、年間収量を高める必要がある(最終目標は50t/10a)。

7000本/10a程度の栽植密度で3段密植栽培を行うにあたり、広くはない作業通路における定植、収穫、残渣処理といった作業の負担増大が見込まれる。これに対し、収穫コンテナや収穫残渣の搬送を自動化し、作業者に追随した移動や目的地への自動搬送を可能とする農作業支援ロボットの開発が、作業の省力化、軽労化の面で必要と考えられる。さらに防除装置の搭載や、通路内での残渣処理装置の搭載などのロボット多機能化も課題となる。

図
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以上のような多方面の課題について、太洋興業(株)と(株)マエカワが中心となり、生研センター、野菜茶業研究所、兵庫県、東北大学の協力と日本施設園芸協会の支援による「農作業支援ロボットを用いたトマト低コスト高生産システムの開発」プロジェクトが昨年度よりスタートしている。詳細は農林水産技術会議のホームページを参照されたい。

http://www.s.affrc.go.jp/docs/activation/outline/outline_top.htm

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