日本養液栽培研究会 | Hydroponic Society of Japan

石油高騰と施設園芸省エネルギー対策の取り組み

通信員 矢部和則(愛知県農業総合試験場園芸研究部)

昨今の石油価格の高騰は、施設園芸にとって大変大きな問題となっています。園芸施設暖房用のA重油は、平成14年ごろまでは35円/L程度で推移していましたが、その後価格の上昇が続き、最近では90円を越える情勢になっています。愛知県では、平成17年度と平成18年度に石油価格等高騰対策技術指針を農業総合試験場より示しました。この中で、施設生産される園芸品目について石油高騰が経営に及ぼす影響が試算されています。特に消費量が多い品目についてみると、ハウスミカン(早期)は23KL/10a消費し、その価格が35円/Lのときは1,429千円/10aの農業所得がありました。しかし、80円/Lになると394千円/10aとなってしまいます。ロックウール養液栽培が多いバラ等切り花では、同様に25KL消費し、35円では2,996円の所得がありますが、80円では1,871千円と62.4%にまで所得が減少します。野菜では、トマト、ナスが10KLと多く、トマトでは35円で2,347千円、80円になると1,897千円(80.8%)、ナスの場合、80円では766千円となり、35円の63%まで著しく所得が減少します。さらに、燃油のみならず被覆資材等の石油関連諸資材の価格も上昇しており、各品目ともに経営の維持すら困難な極めて厳しい状況になっています。

施設園芸農家における当面の省エネルギー対策は、内張カーテンの多層被覆、多段式サーモによる変温管理、循環扇の設置及び既設温風暖房機への廃熱回収装置の設置などです。国の補助金により愛知県でもオオバなどの高温性野菜類を中心に導入が進んでいます。また、バラのロックウール栽培、コチョウラン栽培及びハウスミカン栽培等比較的高温で加温管理し、しかも夏季に冷房する栽培品目では、電気式ヒートポンプに対する関心が高く、その導入が急速に進んでいます。しかし、これらの対策技術を導入しても、重油価格の上昇を相殺できるほどの燃油節減効果にはならず、冬期の栽培を回避したり、他の低温性品目へ転換するような事例もみられています。

さる3月7日、愛知県農業総合試験場において、「GAP及び施設園芸の省エネルギー技術」をテーマに、民間企業と愛知農総試の合同で第6回愛知県施設園芸技術研究会を開催しました。関心の高いテーマで、地元大手自動車メーカーを始め50名余の参加者があり、会場は満席でした。愛知農総試では、農水省の高度化事業(地方領域設定型)で、野菜、花き、落葉果樹及び常緑果樹の施設栽培における省エネルギー技術を開発中であり、その成果の中から、高品質生産のための効率的な夜温管理を始めハウスミカンの変温管理、ハウスイチジクの根圏加温等を紹介しました。JAあいち経済連や民間企業からは、ハイブリッド型ヒートポンプ、循環扇の効率的利用、省エネ被覆資材、空気膜ハウス等についての開発状況や製品の紹介がありました。これら相互の成果発表や情報交換を通じ、今後とも連携して施設園芸の省エネルギー化に向けた技術開発を行うことを確認しました。

重油高騰に対応した省エネルギー技術の開発は急務です。さらに、地球温暖化防止、京都議定書に示されたCO2等温室効果ガスの削減目標の達成などの視点からも、施設園芸の燃油削減、省エネルギー化は重要です。養液栽培では、さらに培養液の加温やCO2施用等も絡み、今一度省エネルギーの視点から技術やシステム等について考えてみる必要があると思います。

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