日本養液栽培研究会 | Hydroponic Society of Japan

ハイドロポニックス 第26巻 第2号 要約

特集:園芸生産の復興支援-宮城県の状況

岩崎 泰永

東日本大震災に伴う津波によって大きな被害を受けた宮城県沿岸部の園芸産地の復旧・復興の状況について,県内の各産地ごとにその被害状況と復旧状況を紹介し,施設栽培の高度化が図られている中,栽培技術の定着に向けた技術支援の重要性を感じている.それに対する研究機関、民間企業による支援活動について紹介し、園芸産地復興への「実施ビジョン」と「実施戦略」の推進における行政のリーダーシップのもとに復興を後押しするような支援活動の必要性が今後ますます求められる.

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特集:福島県における放射性物質による農作物の被害の現状と福島県農業総合センターの対策試験研究の取り組み

伊東 かおる

東日本大震災に伴う東京電力第一原子力発電所の事故による放射性物質により, 福島県では農地や果樹の樹体が汚染され,農産物からは、放射性物質が検出された.福島県農業総合センターでは、放射性物質対策チームを立ち上げ,関係機関との連携しながら対策技術の開発に取り組んでいる.

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特集:研究プロジェクト「先端プロ」による施設園芸の震災からの復興支援~1年目の現状~

高市 益行

先端プロの施設園芸分野の取り組みの一年目の状況を報告する。前例のない大災害の支援を対象とする研究プロジェクトの運営には難しい面がある。限られた予算と人員の中で,被害地域の園芸生産の復旧と発展に最大限に貢献するために,色々な取り組みを精力的に進めている.大規模施設園芸実証研究施設の特徴や、重点的な取り組みを紹介する.

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特集:イスラエルからの支援-簡易養液栽培システム-

田川 不二夫

点滴潅水をはじめとする省資源・環境保全型農業技術の先進国であるイスラエルから,東日本大震災の被災地に簡易養液栽培システムが寄贈された.このシステムは,ココナツ繊維培地をポリエチレン袋に入れたグローバッグと,重力を利用して点滴潅水を行う簡易潅水システムで構成されている。宮城県と福島県の被災地に贈られたこのシステムを利用して,津波や放射能汚染の風評被害と戦う生産者の取り組みを紹介する.

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特集:植物の塩害と耐塩性

藤山 英保

乾燥地農業で作物に最も深刻な影響を及ぼす塩害は浸透圧害とイオン害に大別できる。水吸収抑制をもたらす浸透圧害に対する植物の耐性についてはアメリカ塩害研究所(U. S. Salinity Laboratory)のMaasが抵抗性、中抵抗性、中感受性、感受性の4つに分類している。イオン害の中心となるのはNaである。NaはK、Ca、Mgのような必須陽イオンの吸収を拮抗的に阻害する、高pHによってFe、Mn、Cu、Znのような必須微量金属を不可給化する、といった栄養障害をもたらす。

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事例紹介:株式会社アクトいちごファームの挑戦!

小野 聖一朗

(株)アクトいちごファームは、H18年設立、いちご未経験ながら3年で出荷栽培面積日本一を目指す。
関連会社の大規模農業のノウハウや、土つくりの技術を最大限に活かしながら、独自の栽培スタイルを確立。
2009年、JGAPを取得。また、販売においても観光農園や直売、冷凍苺(6次産業)にも力を入れる。しかし、収量、品質、コストなど課題も多く、2010年より、九州大学と大分県農林水産指導センターと共同で、ITを活用した農業を始めた。これは環境計測システムであり、簡単に、計測、閲覧できるのが非常に良い。2011年より、ローソンファーム大分にて新たにトマトを栽培中である。

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事例紹介:トルコギキョウの養液土耕への取り組み 福島県南会津町「土っ子田島Farm」

田川 不二夫

福島県南会津町でトルコギキョウの養液土耕を行う「土っ子ファーム田島」の取り組みについて紹介する.トルコギキョウは生育初期の水分管理が難しいが,点滴チューブを使った養液土耕によって土壌水分管理が容易になり,秀品率を高めることができた.同ファームは,MPSプログラムにも参加して環境面にも配慮した生産を行っているが,効率的な施肥ができる養液土耕は環境負荷低減にも貢献している.

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事例紹介:(株)誠和におけるイチゴ多収(10t)どりの取り組み

喜古 歩

誠和では経営の根幹は収量にあると考え,イチゴの多収取りを目指し,平成19年度より栽培研究を行ってきた.高い収量を実現しているオランダの環境管理を参考に高めの温度管理と昼間のCO2株元施肥を行ったことにより平成22年度には,10aあたりの収量が9.5tになった.平成23年度には,夜冷促成栽培を導入し,収穫開始が早まり,収量が10tに達成した.今後誠和では,この10t達成の栽培技術をマニュアル化し,栽培指導や支援を行っていきたいと考える.

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事例紹介:北海道高度化施設園芸事業:輸出型太陽光植物工場を目指して

大橋 清美

北海道の地に大規模太陽光利用型植物工場を建設した。建設までの経緯と建設における問題点が大きな壁となった。 植物工場は、苗の定植から栽培室での育生においては、1.2haで実労3名程度で行なえるが、収穫から袋詰めは35名を要し、この作業がボトルネックとなっており、自動化が急務であり、研究開発に取り組んでいる。

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研究の紹介:養液栽培における高温性水媒伝染病害の安全性診断マニュアルの策定

景山 幸二

近年、養液栽培において大きな被害をもたらしている高温性水媒伝染ピシウム属菌は、養液を介して瞬く間に施設全体に広がるため、発見が遅れると防除が困難である。そこで、本研究では病害に対する対処療法でなく、分子生物学的手法を応用した簡易診断法による施設内外の病原菌のモニタリング、発病の推移や被害程度および環境要因の解析に基づき、「いつ」・「どこで」・「どの」病原菌が検出されれば「どの程度」の被害を受けるかを予測し対処する方法を安全性診断マニュアルとして示すことを目標としており、その概要を紹介する。

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研究の紹介:「今年もいつもと同じくらいリン酸肥料を施用するべきなのか?」

安 東赫

近年、リン資源の枯渇が問題となり、リン酸を効率良く吸収させるための技術開発が求められている。特に、施設栽培においてはリン成分の蓄積量が多く、肥料価格の高騰に伴いこれらの成分を有効に利用する必要がある。本稿では有機酸施用や養液土耕法の活用に関する事例を紹介するとともに,栽培におけるりん酸施肥の現状にについて考えてみる.

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研究の紹介:トマトの一段密植栽培における積算温度を基準とした培養液濃度管理

吉冨 彩子

トマトの一段密植栽培において,培養液濃度を徐々に上昇させることで過度のストレスを回避し,果実肥大を確保しつつ糖度を向上できるか,濃度上昇時期の指標に開花後積算温度を基準とできるかを検討した.培養液EC値を積算温度650℃の時に上昇させると、収量を確保しつつ,糖度6の果実を得られる可能性が示唆された.

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研究の紹介:シクラメン生産におけるLEDの塊茎近接照射~葉組み作業の軽減化を目指して~

長嶋 豊之

シクラメンの葉数と株張りは葉組みによって改善できるが,葉組みは手作業である上,技術力とかなりの時間を要するため,葉組み作業の省力化が重要な課題である.そこで,塊茎中心部付近にLEDを近接照射することにより,葉組み作業と同等の効果があるかを検証した.LEDによる塊茎への補光処理はシクラメン栽培における葉組みと同等の効果が得られる可能性が示唆され,葉組みの省力化につながる新たな技術になるものと考えられた.

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研究の紹介:二酸化炭素マイクロバブル法による養液栽培における培養液の殺菌

斎藤 岳士

二酸化炭素マイクロ・ナノバブル(MNB-CO2)法を培養液の実用的な殺菌技術として確立するため,MNB-CO2法による軟腐病菌の殺菌における処理温度の影響を検討した.低温混合槽の処理圧力1.5MPaでは,40度以上5分間の処理により軟腐病菌の殺菌が可能であった.MNB-CO2処理後の培養液中の無機成分含量や,その培養液によるリーフレタスの生育には影響殺菌処理による影響は認められなかった.以上の結果から,MNB-CO2を用いた殺菌方法が養液栽培における培養液の新たな殺菌方法となり得る可能性が示唆された.

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新製品の紹介:複合環境コントローラー NMCプロ・クライメート

大野 正智

複合環境コントローラー NMCプロ・クライメートを紹介する。本機は,天窓,カーテン,暖房,CO2制御,照明,ミスト制御,パッド&ファン,ファン制御,植物保護プログラムの9つの制御プログラムを有している.大型液晶画面を持ち,操作性と堅牢性を備えたコンパクトな筐体で拡張性にも優れ,PCと接続して専用ソフトウェア・NMCネットを使うとさらに利便性が向上する.低コストであり,実用的な複合環境制御機として上市された.

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新製品の紹介:アザミウマの侵入を防ぐ赤色防虫ネット=e-レッド

阿部 弘文

赤糸特殊微細糸を織り込んた色彩作用によるアザミウマ防除資材を神奈川県農業技術センター農業環境部と共同開発したので紹介する.

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新連載:養液栽培で発生する病気の基礎知識 (1)ピシウム菌

渡辺 秀樹

今回から、養液栽培で発生する病気について病原菌別に生態を中心に述べる。今回はピシウム菌の発生生態や養液栽培における伝染環、防除対策について紹介する。

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連載:オランダトマトの多収化を探る(6)オランダ品種の光利用効率の変化

東出 忠桐

オランダ品種の新鮮果実収量は1950年より年に約0.9%ずつ増加しており、収量増加は総乾物生産の増加および光利用効率の増加に基づいている。また、光利用効率の増加は吸光係数の減少と個葉光合成速度の増加のどちらの要因にも起因していた。このような生理生態的な変化がオランダトマトの多収化に大きく貢献したといえる。

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