日本養液栽培研究会 | Hydroponic Society of Japan

ハイドロポニックス 第29巻 第1号 要約

特集:固形培地耕の歴史的経緯と展望

糠谷 明

わが国の実用的固形培地耕は、1960年代の礫耕の導入により始まった.その後1980年代のロックウール耕の導入により設置面積が増加し,1987年に本会が設立される引き金となった. 1990年代後半からは天然有機物を培地とするシステムが増加し,ロックウール栽培とほぼ同面積となるに至った.さらに近年では,極少量培地による栽培方法が開発され,高糖度トマトが栽培されている.

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特集:ロックウールについて

多田 亘児

ロックウールとは,高炉スラグ等を高温で溶融し,遠心力などで吹き飛ばし繊維状にした人造鉱物繊維である.耐火,断熱,吸音性に優れることから,様々な産業で広く利用され,その用途の一部に農業用培地がある.ロックウールの特性は,主原料と製造条件及び製品の形状により左右される.主原料は化学性に影響し,物理性は製造条件や製品の形状によって異なる.ロックウールを使用時には,用途に応じた製品の選定が必要である.

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特集:ヤシガラ培地を使った隔離養液栽培ココバッグ栽培システムについて

大月 裕介

ヤシガラ培地を用いた養液栽培に関して、自社研究農場における栽培試験結果に基づき、培地の容積と粒度をオリジナルで設計した『ココバッグ栽培システム』を開発した。2005年より本格販売を開始し、トマト・ミニトマトを中心に現場の要望も取り入れながら改善を重ね、2014年現在、全国で362件、導入面積で42ha以上の実績がある。現在、キュウリやナスなどへの導入のための基礎試験を継続中である。

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特集:粒状フェノール発泡樹脂(アクアフォーム)の特徴と使用例

嶋本 久二

養液栽培用固形培地である粒状アクアフォームはフェノール樹脂を発泡させ硬化させたもので、電気的中性で酸、アルカリによる変性がないため長期的に安定した物理性、化学性を示す。
このため、酸で溶けるロックウールや腐敗により物性変化が起こりやすいココピート等に比べて長期間の使用に耐える。また、粒状の発泡体の集合であるため、通気性と保水性を併せ持つため根の生育が旺盛になり、バラ、トマト、イチゴ、ナス、様々な切り花、ブルーベリー等多くの作物で使用実績をもつ。

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特集:高品質トマトを生産できる低コストバッグカルチャーシステム

植田 直人

東日本大震災被災地において,農業の早期復興や生産者の収益向上に貢献するため,本研究では,必要最低限の灌水量で,且つ低コストで高品質トマトの生産が可能な省管理型のバッグカルチャーシステムを開発した.本システムは日射比例式給液制御機と土壌水分制御機を組み合わせた灌水方法を採用しており,高品質なトマトをより簡単に栽培できるだけでなく,従来のロックウール耕に比べて半額以下で導入できるメリットがある.

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特集:最新培地の開発状況~親水性樹脂を用いた養液栽培用培地の開発~

西村 安代

養液栽培用の新しい培地として親水性樹脂の実用化試験を行っている.トマト栽培では,ヤシガラやロックウール培地と比較して親水性樹脂培地ではやや生育が劣ったが,養液栽培用培地として十分に利用可能であることが明らかとなった.また,ミニ大根では,ひげ根や分岐根もない大根を栽培することができ,根菜類栽培にも適していることが判明した.使用するベッドや灌水管理方法などアイデア次第で様々な作物が栽培可能である.

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事例紹介:いちご新規就農者研修所での取り組み

加藤 正

岐阜県のいちご生産者が減少する中、全農岐阜県本部は平成20年度に新規就農者育成施設を立ち上げ、現在までに卒業生100%、27名の就農者を育て上げた。
研修期間は14ヶ月。4月入所後、担当ハウス(10a)で栽培の知識・技術を実践体得、座学で基本学術の修得、研修期前半で就農地確保、後半期に就農施設の仕様、見積もり検討をし、翌年4月より工事開始。
「問題点の早期発見、叉路事態の判断の適確化と決断」を研修モットーとしている。

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事例紹介:低段密植(保水シート耕)による高糖度トマト栽培

新門 剛

食味の良さから消費者・流通業者に更なる増産を期待されている高糖度トマトであるが 、その生産・販売はかなりシビアなものである。
20年前から(土耕(長期一作)6年・水耕(低段密植)14年)高糖度トマトを生産・販売してきた生産者として現状および今後の目標を述べる。

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研究の紹介:クロロフィル蛍光画像計測ロボットによる植物診断

高山 弘太郎

クロロフィル(Chl)蛍光は,吸収した光エネルギーのうちで光合成に使われずに余ったエネルギーが赤色光として捨てられたものである.そのため,Chl蛍光を正確に計測することで非破壊かつ非接触での光合成機能評価が可能となる.本稿では,Chl蛍光画像計測ロボットとこれを用いたトマト生産太陽光植物工場における植物診断例について紹介し,高空間分解かつ高時間分解の次世代環境制御の可能性について述べる.

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研究の紹介:養液栽培レタスで確認された新病害

宇佐見 俊行

国内の閉鎖型植物工場(湛水型水耕栽培)でレタスの茎が腐敗する病害が発生し,Plectosphaerella pauciseptataによる新病害として報告された.本稿ではその特徴を紹介する.その後,国内の3地域で本病害が発生したが,病原菌の種や系統は多様で,伝染源は各地に存在すると考えられた.本菌は濡れた茎葉部を強く加害するため,植物の茎葉部を過度に濡らさないことが重要である.本病のように養液栽培系で特に発生する病害について,更なる調査と研究が必要である.

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研究の紹介:SIPにおける植物工場の課題

中野 明正

戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の農業関連の課題及び,施設園芸の課題について紹介する.「収量や成分を自在にコントロールできる太陽光型植物工場」では,「統合オミクス情報を利用したトマトの体系的最適栽培管理技術の開発」および「農林水産系のファインバブル技術開発」の2課題で構成され,筆者らが推進する前者の課題を中心に紹介する.

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新連載:ホープが語る!未来のハイドロポニックス トマトの局所温度制御技術の開発 -画期的な省エネルギー技術を提唱します-

河崎 靖

今号から始まった連載、養液栽培に関連する研究に取り組む若手研究者から会員の皆様にいい情報をお届けします。トマトのように連続的に果房が分化し、その位置が変化する作物では地上部器官への局所施用は困難であったが、生長点の局所冷却(夏期)や局所加温(冬期)により収量を高めることが確認され、その上暖房コスト削減率26%という実績が得られた。今後さらに課題をクリアーしてより精度の高い環境制御の仕組みを確立するための研究を行っていく。

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連載:(11)CO2施用+細霧併用による収量向上(1)

東出 忠桐

CO2施用および細霧システムの併用が、日本品種の果実収量や物質生産に与える影響について調べた。冬春季の施設内では日中の相対湿度は30%以下まで低下するが、細霧によって改善できる。用いた3品種の果実の収量は、CO2と細霧の併用によってCO2も細霧も共に行わない場合に比べて1.15~1.45倍に増加した。果実の乾物含量にはCO2と細霧の有無によって違いはみられなかった。総乾物生産は、CO2と細霧の併用によって1.39~1.46倍に増加した。

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新製品の紹介:プロファームのご紹介

桐山 務

施設栽培の効率化,安定化に向けて,トヨハシ種苗とともに取り組んでいる統合環境制御を中心としたプロファームについて説明する.栽培理論に基づいた栽培環境を,統合環境制御の考えに基づいた加温制御・冷却制御・PID制御等の自動車技術の応用により実現している事例を紹介.ハウス環境全体の改善に取り組み,農業の発展に貢献していきたい.

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新製品の紹介:「ピュアスター」の農業分野への利用

橋本 好弘

本装置は,微酸性電解水を製造する装置である.生成水はpH5.0~6.5,有効塩素濃度10~30ppmの安全な殺菌水である.殺菌効果は短時間で減衰し,速やかに無毒化する特徴がある.主成分は,次亜塩素酸(HClO)であり非解離状態では細胞膜を速やかに通過してDNAやタンパクに損傷を与える.pHがアルカリ側ではClO-イオンとなり細胞膜を通過できなくなるため殺菌効果は1/80に低下する.熱や界面活性剤により効果増強できる.細霧冷房システムに組み込むことで散布作業なしで水とハウス内の空気の除菌,葉面菌数の大幅な低減が期待できる.

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連載:養液栽培で発生する病気の基礎知識 (6)葉かび病菌

渡辺 秀樹

第5回は、花き類やネギで被害が発生しているフィトフトラ菌の発生生態や伝染環、防除対策について紹介する。

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