日本養液栽培研究会 | Hydroponic Society of Japan

ハイドロポニックス 第29巻 第2号 要約

特集:ここまできた,施設園芸最先端IPM技術

武田 光能

IPMの考え方や日本型IPMの紹介に続いて,施設園芸におけるIPMの考え方として「入れない・増やさない・出さない」とする施設内をクリーンゾーンと位置づけたIPMの諸対策を紹介し、現時点で利用できる新たな防除技術を簡単に紹介する。施設園芸におけるIPMの基本的考え方を紹介する.

目次へ戻る

特集:金属ニッケルによる防藻効果

草刈 眞一・金剛 穂波・鈴木 真実・森川 信也

養液栽培のシステムにおいて水回りで発生する藻は,施設の外観や衛生管理の点から対策が求められる。銅や銀イオンによる藻の発生抑制効果が知られるが、同時に植物にとっても有害である。ニッケルの特殊メッキであるケニファイン紛体を塗装したウレタンで藻の発生が抑制できるが、その量が増えると植物の生育も抑制されるため、その適切な使用に向け、金属マットの利用など、アプリケーションを含めさらに検討を進めているとことである。

目次へ戻る

特集:施設ナス栽培での赤色ネットと生物農薬の併用によるアザミウマ防除対策

柴尾 学

薬剤のみによる防除が困難になっている施設栽培ナスのミナミキイロアザミウマについて、赤色ネットの利用、スワルスキーカブリダニやメタリジウム粒剤など生物農薬の利用、有効薬剤の利用を併用したIPM体系を紹介するとともに、養液栽培への転用とその課題について考察した。

目次へ戻る

特集:天敵利用を加速させる高濃度二酸化炭素処理技術の開発状況

村井 保

施設栽培野菜においては害虫の苗からの持ち込みをなくすことがIPMの基本である.イチゴのハダニ防除のため、イチゴ苗に対する高濃度炭酸ガス処理技術を開発した.イチゴでのハダニ抑制効果は高く、10~20%の増収効果も認められる。炭酸ガス処理によってハダニの初期密度を低く抑えることができればカブリダニなどの天敵導入の成功率も上昇するものと思われる。現在,各種野菜苗に対する処理方法や処理装置の改良を進めている.

目次へ戻る

特集:農業における紫外線UV-Bを利用した病害防除技術

八谷佳明,菅野亘,山田真

主としてイチゴうどんこ病の防除技術として紫外線(UV-B)照射器具を提供してきたが、この度、従来器具よりもコンパクトで施工が容易、かつ低価格な新照射器具を開発した。さらに、農林水産省「食料生産地域再生のための先端技術展開事業(先端プロ事業)」の一環として行った研究成果から新器具と従来器具との比較、低農薬化の可能性を提示した。また、イチゴ以外の他作物への適用事例についても紹介した。

目次へ戻る

特集:促成イチゴにおける温湯散布を利用した病害虫防除

小河原 孝司

イチゴの育苗期および本圃栽培期に約1週間間隔で温湯散布を行った場合の病害虫に対する防除効果を検討した。その結果,うどんこ病,アブラムシ類およびオンシツコナジラミに対する効果が高かった。イチゴ栽培期間中に発生する病害虫に対し,温湯散布や化学合成農薬としてカウントされない農薬等を組み合わせることで,化学合成農薬の使用回数を3分の1程度まで削減できると考えられた。

目次へ戻る

特集:ここまできた施設園芸最新IPM技術~宮崎県の事例~

黒木 修一

宮崎県では,病害虫の防除経費・労力を圧縮しつつ収量と品質を向上させ,同時に消費者に安心してもらえる農産物を供給するために「宮崎方式ICM~作物のちからフル活用プログラム~」を提唱している.適正施肥のための土壌や養液の診断,適正な草勢管理,病害虫の発生源管理や防虫ネット等の活用,微生物や天敵等を体系的に組み合わせるものである。実際に養液栽培を含むトマト産地では,トマト黄化葉巻病の発生を97%減少させる成果を得ている.

目次へ戻る

事例紹介:〝冬春トマトの新規就農者育成研修施設〟「岐阜県就農支援センター」の取り組み

田村 康則

岐阜県では、県が開発した「トマト独立ポット耕栽培システム」を活用し、冬春トマトの新規就農者を育成すること目的に、平成26年4月に岐阜県就農支援センターを開設した。
 当該センターの施設概要と研修カリキュラムを含めた研修概要を紹介するとともに、研修者の就農に向け、関係機関(市町村、JA、生産者組織等)の支援体制整備と支援内容について、これまでの取り組みを紹介する。

目次へ戻る

事例紹介:有機質肥料活用型養液栽培 富山ヘルシーグリーンズハウスの取り組み

北林 広隆
篠原 信(取材)

根の溶存酸素要求量が大きいホウレンソウは、有機質肥料活用型養液栽培では難しい品目とされていた。しかし創意工夫を重ねることで、ついに有機質肥料活用型養液栽培による栽培に成功、しかも夏場の最も難しい時期での栽培にも問題なく成功した。

目次へ戻る

事例紹介:わかば農園「天空の畑」の取り組み

長岡 歩美

わかば農園㈱の「天空の畑」は、平成21年の新工場設立を機に、2階建て社屋の屋上に誕生したハウスである。この天空の畑では、現在、ベビーリーフをNFTで栽培しており、機械を使って、1株で複数回の収穫を行っている。
 本事例紹介では、天空の畑の施設概要と栽培概要を紹介する。また、立枯れ病の発病から消毒までの経緯、消毒の概要、今後の課題について述べた。

目次へ戻る

事例紹介:ここまできた,復興プロジェクト(先端プロ)におけるトルコギキョウ水耕栽培

福田 直子

先端プロおよびトルコギキョウの水耕栽培の現状について紹介

目次へ戻る

研究の紹介:バラ根腐病の発生要因と防除対策

鈴木 幹彦

バラ根腐病は液温が22℃前後の春、秋に遊走子を多数形成して感染が拡大する。静岡県内のほ場調査の結果、68.9%で根腐病菌が検出され現場での汚染が進んでいる。1農協部会47圃場について発病調査を行ったところ、発病確認は3圃場のみで、感染に気付かずに栽培が行われていることが明らかとなった。本病検出に遺伝子診断手法のLAMP法を用いて、本菌を迅速・簡易・精確に識別できる手法を開発した。本手法は植物体や培養液等から菌を検出でき、従来では4〜5日間かかったのに比べ、1時間程度で判別できる。

目次へ戻る

研究の紹介:野菜施設生産における有機液肥利用

中野 明正

施設栽培における有機液肥の利用について解説した.化学肥料と有機質肥料の特徴と有効利用,有機液肥を用いた栽培技術,アミノ酸による病害抑制と生育促進,アミノ酸等有機物の直接吸収,有機農産物と品質について等,有機液肥の施設栽培における活用事例を中心に紹介した.有機関係は様々な不確かな情報があり,安定した生産資材として活用するための注意点についても指摘した.

目次へ戻る

研究の紹介:LEDを活用した夜間補光技術による葉菜類の生育促進技術

福田 直也

高出力型の赤色LED光源を活用して夜間に連続的な照明を行うことにより,レタスやシュンギクなどの葉菜類の生育を大きく促進させることに成功した.特に冬から春にかけての低日射期での効果は大きく,LEDの長寿命ならびに低消費電力を活用した新しい栽培技術として活用することは可能である.更に,この栽培技術条件下において一部のポリフェノール濃度が増大するなど機能性を強化することができる可能性も示唆された.

目次へ戻る

研究の紹介:赤色防虫ネットを用いた防除技術に関する研究

大矢 武志

防虫ネットによる農作物の被覆は害虫を防除する有効な手段であるが,微小害虫に対して一般的な目合いでは防除効果が認められない一方で,目合いを細かくしすぎると農作物の生育に悪影響を及ぼすため,従来防虫ネットを用いたアザミウマ類の防除は不可能と考えられていた.今回防虫ネットの色に着目,昆虫には「認識できない」赤色の防虫ネットを作成し,アザミウマ類に対する防除効果を検討したところ,一定の効果を示した.

目次へ戻る

連載「ホープが語る」:CO2施用時の加湿制御
―作物の生育にとって好適な湿度範囲を考える―

鈴木 真実

ハウス内のCO2濃度を人為的に高める二酸化炭素(CO2)施用は,光合成を促し作物の生育や収量を向上させるため,近年再注目されている.このうち筆者は,CO2施用時の湿度に着目し,最適な湿度範囲と加湿制御の利点・留意点を整理してきた.本稿では,キュウリ幼苗を用いたCO2施用時の好適な湿度範囲と,CO2施用と加湿制御を組み合わせた場合のトマトの生育や養水分吸収について紹介する.

目次へ戻る

連載:(12)CO2施用+細霧併用による収量向上(2)

東出 忠桐

CO2+細霧により光利用効率は約1.5倍に向上し、植物が1 MJの光を吸収するごとに4 g以上の乾物が生産される。果実への乾物分配率は、用いた3品種のうち2品種では、CO2+細霧による影響はみられず、光利用効率の向上による地上部総乾物生産量の増加が、直接、収量増加に結びついた。1品種のみ、CO2+細霧により、果実への乾物分配率が有意に低下し、この品種では、肥大中の果実を持つ果房数、すなわち、着果負担が他の品種よりも大きかった。

目次へ戻る

新製品の紹介:高温性ピシウム属菌検出キット

庄司 和幸

本製品はLAMP法を利用して高温性水媒伝染病害を引き起こす病原菌の一つであるピシウム属菌を検出するためのLAMP法専用試薬である.高温性ピシウム属菌プライマーセットとLAMP法用DNA増幅試薬セット-動物種・植物病検査専用B- (別売) と組み合わせてキットで使用し,DNA増幅の有無からピシウム属菌の存在を判定する.判定には専用の機器等を必要とせず,使用方法は抽出したDNA溶液と試薬を混合させ,一定温度で1時間保温するだけであり,極めて簡便である.

目次へ戻る

新製品の紹介:低pHを可能にする「硝酸カリウムペーハスト」について

小松 敏志

エヌ.ピー.ケー貿易㈱が日本の総代理店をしているハイファケミカル社には,硝酸カリウムのスペシャルグレードとして「硝酸カリウムペーハスト」がラインアップされている.この「ペーハスト」は,pH値を継続的に低く抑えるという特長を持ち,原水pH値の高い圃場や,湛液式やNFT等の循環式水耕,養液栽培に対して,効果が期待できる.これにより,解決できる問題は多い.

目次へ戻る

新製品の紹介:H2 Floのご紹介

田畑 正秀

H2 Floは,ブロックポリマーを88%配合した非イオン界面活性剤である.土壌を含む培地のための湿潤剤・節水剤として開発された.非イオン界面活性剤であるために,養液中のイオンと結合し沈殿を起こしたり,泡を作ったりすることがない.作物への安全性も高い.灌水に混入させることで,無極性や疎水性の物質が,水をはじくことのないようにする.そのため,培地内での透水性と水分の水平移動が改善し,より少ない水で根圏を均質に湿らすことができる.

目次へ戻る

連載:養液栽培で発生する病気の基礎知識 (6)うどんこ病菌

渡辺 秀樹

第7回は、キュウリをはじめ多くの品目で被害の多いうどんこ菌の発生生態や養液栽培における伝染環、防除対策について紹介する。

目次へ戻る

このページの先頭に戻る

このウィンドウを閉じる