日本養液栽培研究会 | Hydroponic Society of Japan

ハイドロポニックス 第32巻 第2号 要約

特集:少量培地耕の魅力

切岩 祥和

「培地は小さくても大丈夫なの?」という疑問に対して、植物の生育や養水分吸収に関する特性から少量培地耕の魅力について述べた。作物の根の発達には水の存在が大きい。この水の供給を制御して栽培しているのが養液栽培であるから、水をコントロールして植物の成育と養水分吸収を制御することができれば、少量培地耕は面白い。そこにどんな特長を付与するかがポイントで、Dトレイを用いた少量培地耕は、育苗が「らく」、定植が「らく」、片付けが「らく」の作業性の向上を付与したシステムである。培地が小さいからこそ生産者の意思を植物に伝えやすいシステムで、栽培も楽しみたい方にはお薦めである。

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特集:少量培地耕における給液制御について

大石 直記

品質重視型トマト栽培を前提として、少量培地耕の基本特性と給液制御の重要性、給液制御の実際、新たな自動給液制御システムについて概説した。培地水分の的確な制御が可能な少量培地耕は、高糖度化もしくは多収化等の生産目的に応じた合理的生産を行うための栽培システムとして極めて有効である。しかし、そのポテンシャルを充分引き出すためには、適切な給液制御システムとの組み合わせが不可欠であり、さらなる改良の余地が残されている。

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特集:トマトのDトレイ栽培について現状と展開

礒崎 真英

三重県農業研究所では2006年頃から少量培地耕の1つであるDトレイを用いた低段密植栽培に取り組んでいる。今回は、その中で得られた栽培データや環境データも用いながら、トマトのDトレイ栽培について述べた。

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特集:独立ポット耕栽培の現状と今後の展開

前田 健

少量培地耕「独立ポット耕」は岐阜県内外での導入が進み,大玉トマト平均収量は土耕栽培の約1.5倍になり,40t/10a以上となる生産者もいる.生産現場では,原水の水質によるかん水チューブの目詰まりや栽培管理上の不注意による病害発生も見られるが,県農業経営課を中心に対策を行っている.現在は栽培システムの高度化による50tどりの試験や夏秋作型システムへの応用などを行い,さらなる多収を目指している.

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特集:養液土耕における少量多頻度給液

田川 不二夫

乾燥地における節水栽培技術として始まった点滴潅水は,水と養分を植物の必要に合わせて供給するという点で養液栽培の考え方と通じるところがある.そのため雨が多く節水の必要が少ない日本では,高度な潅水施肥管理技術としての面で注目され,土を使った養液栽培すなわち養液土耕と呼ばれるようになった.本稿では養液土耕の基本技術である少量多頻度給液の背景と将来について解説した。

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特集:果樹栽培での展開

遠藤 昌伸

果樹の栽培では,土耕栽培が基本であるが,担い手の減少や高齢化への対応,高品質果実の多収生産,早期成園化などを目的に,根域制限栽培や養液栽培についての研究や技術開発が盛んに行われるようになってきている.果樹の分野で少量培地耕と位置付けされるものは少ないため,本稿では,果樹の根域制限栽培に関する技術について紹介する.

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事例紹介:接ぎ苗育苗事業の最前線

豆塚 輝行

ベルグ福島(株)は人工光利用型育苗施設を利用した接ぎ木苗を生産・販売している会社である.人工光利用型育苗施設では、光、温度、CO2濃度、潅水・施肥をコントロールした環境下で苗の生産を行なうため、通年安定した品質で無病虫害の苗を提供できるメリットがある。しかしながら、多品種少量生産により、育苗スケジュールが煩雑化しており、効率的な設備利用ができていないことが課題となっている。

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事例紹介:ハイポニカにおける海上コンテナ型水耕栽培システムの新たな取り組み

鈴木 寛正

協和株式会社ハイポニカでは約50年にわたり主にDFT型の水耕栽培設備の研究開発と販売を続けてきた。しかし1990年代の後半からは世界の耕作可能地の面積も減少傾向にあり、より単位面積当たりの生産量の増大が求められるようになってきた。更にはコンピュータを用いた環境制御システムや人工照明が発達してきており、室内型の水耕栽培が大きな役割を担うようになってきた。これを受けハイポニカでもこれまでの技術蓄積を生かした形での海上コンテナ型水耕栽培システムの開発に取り組むこととなった。

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事例紹介:キュウリの養液栽培で新規就農をするために農研機構で勉強している

安藤 寿規

キュウリの新規就農を準備している筆者は,農研機構野菜花き部門植物工場つくば実証拠点にて,実践を学ぶため研修を受けてきた.栽培素人の筆者が,1年8ヶ月の間,キュウリの養液栽培の研修で経験した事について報告したい.

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研究の紹介:ポリエステル繊維の園芸培地としての新しい可能性

林 孝洋

ポリエステル繊維は古着などのリサイクル資材であるが,園芸用の培地として様々な栽培システムに適用が可能である.培地としては通気性と保水性に優れ,軽量で,物理性・化学性が安定している.また,フリースに使われるように,断熱性も良い.本記事では,福島のアンスリウム栽培をはじめ,いくつかの適用事例を紹介する.

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研究の紹介:食用ウチワサボテンの水耕栽培技術の確立

堀部 貴紀

ウチワサボテンの茎節は野菜や家畜飼料として世界の広い地域で消費されている.土を使用しない水耕栽培では土壌病害の回避や綿密な肥料管理による栄養成分の改変が可能となり,また生産性の向上にもつながる可能性がある.しかし,ウチワサボテンはこれまで水耕栽培の研究対象として注目されておらず,ウチワサボテンの水耕栽培に関する情報はないに等しい.本報告では,筆者のこれまでの実験で得られた知見について紹介する.

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新連載:ホープが語る!未来のハイドロポニックス
所得向上に焦点を当てた取組の実証へ

磯山 陽介

植物工場三重では、県試験研究機関では数少ない苗生産から本圃生産、市場出荷、販売まで行っている。その特徴を生かし、一事例ではあるが、各要素技術が結果として、植物体に及ぼす影響だけでなく、過去の栽培手法からどの程度労働時間が変わり、販売量や収益にどのように貢献するかを実証していく場所にしていき、各要素を参考にしてもらうなかで、農業経営体の経営に資する場所にしていきたいと考えている。

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新製品の紹介:ビール酵母細胞壁を利用した液肥について(商品名:セルエナジー)

大野 勝也

清和肥料工業(株)が、アサヒバイオサイクル(株)と協業し開発した液肥の紹介。ビール酵母細胞壁にあるβグルカンを配合している当該製品は、そのβグルカンの特性を植物の根張り効果などに利用することと、この液肥自体の還元性を活かして、鉄剤を2価鉄の状態で維持できる効果を活用し、一部糸状菌などの抑制効果を期待する。

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新製品の紹介:カネコ種苗(株)のお勧め水耕栽培向けリーフレタス

石鉢 依子

カネコ種苗(株)のお勧め水耕栽培向けリーフレタスを紹介。ワンカットで一口大にばらばらになる人気の「マルチリーフ®レタス」シリーズの中から今お勧めしたい「マルチリーフ®エアリ」、シャキシャキ感が売りの低温期でも生育旺盛なフリルタイプのレタス「フリルクリスプTM」、高温期にこそ栽培して欲しいカキチシャ品種「ヘルシーPAOTMエース」「ヘルシーPAOTMレッド」をご紹介。

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連載:養液栽培で発生する病気の基礎知識 (13)菌核病

鈴木 幹彦

菌核病は多犯性の病害で、ネズミの糞状の黒色菌核を形成する。菌核から伸びた菌糸や菌核上に形成したキノコ(子のう盤)から子のう胞子が飛散して感染する。防除は菌核病の防除農薬が多数登録されているので、予防散布を実施する。

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